連絡帳による保護者からの再三の苦情で不眠症に陥ったとして、市立小学校の女性教師が慰謝料を求めていた訴訟の判決が28日(2013年2月)、さいたま地裁熊谷支部であった。
判決は守秘義務のある学校関係者だけが見る連絡帳には公然性はないとし、「話し合いで解決するのが望ましい」と原告の請求を棄却した。
連絡帳に「娘を無視している」「先生の自覚ない」…警察にも被害届
訴状によると、ことの発端は2年半前で、3年生の女児とクラスメートとの間でトラブルが起き、その処理を巡って、保護者から「自分の娘は悪くないのに謝らせようとした」と担任の40代の女性教師に苦情の電話が入ったことだった。その後も、子どもの近況を教師と保護者でやり取りをする連絡帳を通じて、頻繁にクレームが入った。
「娘が一番初めに手を挙げたのに無視されるようになった。どうしてこのようなことをするのでしょう。娘は学校に行きたくないという言葉を使うようになった」
「先生の自覚がないので、私どものことを許せなくて、悔しくて、感情的になり、同じことを繰り返しています。全く困った先生です」
いさかいが高じてこんなこともあった。給食の後片付けで女児が十分に洗わなかったため、女性教師は背中を2度触れて注意した。これに対し、保護者は「もっときれいにしてって、バチン、バチンと背中を叩かれたんです。強めに」と怒り、暴行の疑いで警察に被害届を出した。
学校側はもの言う保護者ひとくくりにして「モンペ」と切り捨て
判決後、この保護者は「私どもとしては『すり替えモンスターペアレンツ事件』だと思っているんですよ。モンペなんだけど法律には引っかからないみたいに報道されると辛いし、素直に喜べない」と語った。
キャスターの小倉智昭「非常に厳しいことを言う親御さんたちもいるみたいなんですけど」
元ラグビー日本代表で芦屋学園校長の大八木淳史は、「学校の現場で最大のカスタマーは児童であり保護者。それをモンペという言葉を使うこと自体ちょっと違う」と学校側の対応のまずさを指摘した。コラムニストの深澤真紀は「私も大八木さんと同意見。モンスターペアレントという言葉が一人歩きしていて、心ある親御さんの正当な抗議もモンペとされてしまうのでは、言うべきこともと言えなくなる。一方で、教師はモンペといってしまうことで楽になる」と話す。
女児はまだこの学校に通っているという。校内で起きた子どものことを話し合いで処理できず、どうして裁判に持ち込むのか。最大の被害者はこの女児だろう。