北アフリカで広がった民主化運動「アラブの春」で母国を逃れ日本に来たアフリカ人ホームレスが増えているという。「真相チェイス!直撃御免」コーナーでそんな30代男性を追った。
短期滞在ビザで入国し公園やモスクで寝泊まり
男性は冷え込み厳しい都内の夜の公園のベンチにいた。支援団体が毎週炊き出しを行なうのを待ってこの公園にやってきたという。
―どこから来たの? 住まいはあるのですか。
「出身はアフリカです。住まいはありません。炊き出しをもらうためにここに来たんです。連絡が取れないので、家のことが気になります。母がどうしているか…」
―なぜ日本に来たんですか。
「宗教対立の運動に参加して、弾圧され拷問を受けた。国に残れば捕まるか殺されてしまう。逃げるしかなかった。自分で行き先を決めたわけではなく、仲介者が決めた」
この男性は母親の安否がよほど気になるのか、「母国の名前を公表しないでくれ」と訴えた。所持品を見せてもらうと、配給でもらったパンと水、それに傘。あとは現金2000円しかない。
「アラブの春」以来、内戦や宗教対立が激化し、弾圧を逃れて母国を脱出するアフリカ人難民が増えている。当初はヨーロッパに逃れたが、受け入れが厳しいため、行き場を失い日本に流れ込んでいるという。
この日も冷え込みが厳しく野宿はできない。寝場所をどうするつもりか。やってきたのはイスラム教のモスク。男性はイスラム教徒だった。この日はここに泊まらせてもらったが、ずっとは泊まれない。次の日、男性が訪ねたのは難民支援協会だった。しかし、30余りある小さな個室はすでに満杯だった。
缶入りおしるこに「この豆はふるさとの豆と同じ味」
男性は短期滞在ビザで日本に入国した。難民申請を行うと同時に、「特定活動」の在留資格を得たが、これまで難民申請が認められたのはわずか21人しかいない。
男性は自動販売機で買った温かい缶入り「おしるこ」とパンを口にしながらこう話した。「この豆はふるさとの豆と同じ味がするので懐かしい」
キャスターの小倉智昭は「日本は難民の受け入れに厳しいですからね」といい、宋美玄(産婦人科医)は「命からがら逃げてきた人をホームレス状態のまま置いておくのは心苦しい」という。
竹田圭吾(「ニューズウイーク」日本語版編集長)「もう少し受け入れていいのかも。そうするとすごい数の人がやってきてしまう。受け入れ態勢を整えないのに増やすのはどうかな」
かつての宗主国として旧植民地から移民や難民を受け入れた結果、翻弄されているフランスなどの現実を見ていると、受け入れを厳しく抑制せざるをえない面があるのも否定できない。