輸入物価急上昇、賃上げは長期の景気回復見えてから…
たしかに、大幅な円安は追い風には違いないが、GDP(国内総生産)に占める輸出の割合はいまや2割に満たない。その中で円安恩典の広がりをどう見たらいいのか。国谷裕子キャスターのこの疑問に、NHK経済部デスクの湯浅庸右はこう解説した。
「今のところ、中小企業は円安でわっと受注が増えているかというと、そこまでいっていません。経済全体を押し上げるところまではなお時間がかかるということです」
国谷「逆にエネルギーの輸入価格上昇が気がかりですね」
湯浅「原油の国際価格が値上がりし、そこに円安が加わりました。ガソリン価格がどんどん上がっています。きょう(20日)発表されたガソリン価格の全国平均は、2年9か月ぶりに11週連続の値上がりとなりました。1リットル155円まで来ている。生活に車が欠かせない地域ではフトコロに響いてきます。
また、景気回復が長期間続くという予測が出てこなければ、企業に賃金を引き上げる動きは出てきません。そこで、本格的な景気回復を狙って2本目の矢の『財政出動』となるわけです」
財政出動の柱は、補正予算と新年度予算を合せて7兆円という公共事業費である。
国谷「巨額な借金を抱える中で、何度も繰り返すことはできないわけで、効果的に使って欲しいですね」
これに湯浅はこう答えた。「国会の答弁を聞いていると、安倍政権は十分そこは認識しているようです。景気実態は昨年の11月を底に回復へ向かい始めていて、その中での財政出動だが、これはあくまで時間稼ぎの政策にすぎません。今後は3本目の矢の『成長戦略』が焦点になります。メニューはすでに出揃っているという指摘もあり、今度こそ絵に描いた餅に終わらせずに実行に移すことが大事になります」
1回きりしか許されないアベノミクスは、3本目の矢に繋げることができるかどうかが正念場になる。失敗すれば、賃金アップが実現できないまま物価だけが上昇、国にはさらに巨額の借金が積み上がり、国民は消費増税だけを味わうということになりかねない。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2013年2月21日放送「アベノミクス 日本経済は再生するか」)