東京・高田馬場の雑居ビルが立ち並ぶ一画でおととい19日(2013年2月)、木造平屋建て住宅が焼け、焼け跡から男女2人の遺体が発見された。焼けた家には60代の女性が住んでいて、火災発生時は2人の男性が同居していた。遺体は住人の女性と同居していた男性の1人とみられている。火事の背景に何があったのか。近所の人の話では、住居人をめぐるトラブルも聞こえてくる。
トラブル繰り返し何度も110番
現場からリポーターの井口成人が伝える。「表通りからはまったく見えない場所で、風にあおられすべてが燃え尽きました。男性は一酸化中毒死、女性は焼死ということです。女性は近くの駐車場や公園でホームレスの人に声をかけ、泊めていたようです」
近所の人によると、焼けた家には「誰でも出入りしていた」「わけありの家なんで…」「ホームレスの人に声をかけて、うちで下宿しないかって。安くしておくからと」。宿泊料は1日1000円、月の家賃は2万円から3万円ぐらいともいう。それが生活の糧になっていた。だが、見知らぬ人を泊めることにはリスクもあった。泊めた人に殴られたり暴行されそうになったりで、何度も110番していた。それでも声をかけていたのは、最近は身体が弱り、同居男性たちに身の周りの世話を頼む必要もあったらしい。
火事の直前に不審な出来事があった。男女が言い争う声が聞こえたというのだ。ただ、この家では度々騒ぎが起きていたので、この日の言い争いがいつものことだったのか、特別のことだったかどうかはわからない。
人柄良く天使みたいだった20代…流転の人世
男性たちとの奇妙な共同生活について、彼女の同級生という男性は「お父さんは早稲田大学を出ているぐらいで教養のある人だった。お母さんは針の先生。1人娘でした」と話す。両親が亡くなってからは1人暮らしだった。別の女性は「64、65歳かな。でも若く見える。若いころはきれいだった」。40年来の知り合いという女性はこんな話をする。
「寂しかったからじゃないかな。20代のころ一緒に飲食店で働いていたけど、人柄がよく、ジャズの歌が上手でお客さんにかわいがられていた。天使みたいなところがあったですね。ドラマの中の女みたいな。なんであんな哀れな死に方しなきゃいけなかったのか、すごくかわいそうで…」
井口「火災の原因は事件なのか、失火なのか、まだわかりません」
焼け跡からあぶり出されるのは、都会の年配者の孤独な境遇だ。