人柄良く天使みたいだった20代…流転の人世
男性たちとの奇妙な共同生活について、彼女の同級生という男性は「お父さんは早稲田大学を出ているぐらいで教養のある人だった。お母さんは針の先生。1人娘でした」と話す。両親が亡くなってからは1人暮らしだった。別の女性は「64、65歳かな。でも若く見える。若いころはきれいだった」。40年来の知り合いという女性はこんな話をする。
「寂しかったからじゃないかな。20代のころ一緒に飲食店で働いていたけど、人柄がよく、ジャズの歌が上手でお客さんにかわいがられていた。天使みたいなところがあったですね。ドラマの中の女みたいな。なんであんな哀れな死に方しなきゃいけなかったのか、すごくかわいそうで…」
井口「火災の原因は事件なのか、失火なのか、まだわかりません」
焼け跡からあぶり出されるのは、都会の年配者の孤独な境遇だ。
文
一ツ石