兵庫県明石市で花火見物の11人が死亡した歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元明石署副署長の榊和晄被告(66)に対し、神戸地裁はきのう20日(2013年2月)、裁判を打ち切る「免訴」を言い渡した。事実上の無罪言い渡しで、遺族側には納得のいかない判決となった。
裁判長説諭「誤解してはいけない。後世に事故を伝えていく責任ある」
争点は被告と現場責任者の地域官との共犯関係を認めるかどうかだった。強制起訴された時点で時効が過ぎていたが、指定弁護人側は共犯の裁判中は時効が停止するという規定に基いて、地域官が公判中だったため時効は成立しないと主張していた。判決は副署長には現場の状況が伝わっておらず、惨事を予見できなかったとして過失を認めず、共犯関係はなかったとした。しかし、判決言い渡し後、裁判長は被告に「まったく問題がなかったわけではない。誤解してはいけない。後世に事故を伝えていく責任がある」と語りかけ説諭した。
コメンテーターの高木美保(タレント)は「釈然としない結果になったのは、よくいわれる法律の限界、裁判の限界ということでしょうか。でも、遺族の人たちにとっては、むごいことだと思う」
弁護士の大澤孝征が法律のプロの立場から熱弁をふるった。「まず、一般の人に知ってもらいたいのは、刑法は罪刑法定主義で、国家権力が恣意的に処罰してはならないというのが原則で、加害者、つまり罪を犯したとされる側の人権を守ることが基本になっている。また、故意犯が原則で、過失犯は罪に問わないのが原則。20世紀までの発想はそうだったと理解してほしい。被害者の人権が意識されてきたのは2000年以降です」
そのうえで、今回のケースでは共犯関係が争点になったが、「過失の共犯は20世紀型発想からいくとあり得ない。故意犯でもなかなか認められない極めて困難なことだ」という。