「玉井さんが作った波の音を目を閉じて聞いていると、本当に南の島の浜辺にいるような気分になれるのです」
司会の羽鳥慎一が溜息をついた。「週刊人物大辞典」コーナーで、効果音の神様と呼ばれる文化放送の玉井和雄(80歳)を取り上げた。
同じコーヒーを煎れる音でも「青山通りの店の午後何時頃の音」
玉井氏があらゆる道具を使いこれまでに作った効果音は5万種類にもなる。2003年には日本オーディオ協会から「音の匠」として表彰された。7年前の06年、防衛庁(当時)関係者から玉井の元に1本のカセットテープが送られてきた。テープには戦艦大和のものとされる砲撃音が録音されて、本物かどうかを鑑定して欲しいという依頼だった。
同僚の文化放送ディレクターは「玉井さんの音作りは、たとえば喫茶店でコーヒーを煎れる音でも、『青山通りにある店の午後何時頃に煎れた音』という具合に細かいディテールにこだわった作り方です」と話す。
羽鳥が玉井が作った怪獣の咆哮音が出る道具に挑戦した。うまく出ない。ガーッツという感じにならないのだ。「僕が吹いても音が出ないのに、玉井さんが吹くとちゃんと音が出るんです。その体力には凄いものがありました」
文
ナオジン| 似顔絵 池田マコト