「日銀総裁人事」しくじったら市場失望広がり一瞬で安倍バブル破裂
ライフワークの憲法改正には少しも触れず、日銀にお札をジャブジャブ刷らせてデフレ脱却を目指す安倍晋三総理だが、そうしたやり方に嫌気がさしたのか、白川方明日銀総裁が4月8日の任期を前に辞職を発表した。これで安倍総理は後継の日銀総裁に意中の人間据えることができると、市場は歓迎しているようだが、最初の躓きにならないのだろうか。
『週刊朝日』までが「一か月後に1割上がるアベ相場142銘柄」をやっている。専門家6人に予測させているが、そのうち4人が推しているのが「三菱商事」。2月1日(2013年)の終値1890円が1か月後には1割上がって2079円になるというのである。銘柄に驚きはない。
ギャンブルの世界の鉄則は「人の行く裏に道あり」である。競馬ではガチガチの1番人気でも来ないことがままあるのだ。当てと越中褌ぁ先から外れるという言葉もある。みんながいいといい出したら、その株の妙味は薄れる。「三菱商事」は今から買っても仕方ないのではないか。(三菱商事は2月7日15時時点で1953円、マイナス13円)
「もう止まらない『安倍バブル』あっという間に株価1万2000円」と、私には悪のりとしか思えない『週刊現代』だが、今週はノーベル経済学者ポール・クルーグマンまで引っ張り出して「1ドル100円越え、アベよ、これでいいのだ」と赤塚不二夫みたいなことをいわせている。
「アベノミクスで大規模な財政出動をやると財政悪化につながるという批判もあるが、これも現実をきちんと見ていない批判といえるだろう。
どうしてか。それは安倍首相が大規模な財政出動を唱えても、日本の長期金利は1%未満の水準を超えておらず、政府の借り入れコストはほとんど変化していないことからよくわかる。
一方で、先ほど述べたようにインフレ期待は高まっているのだから、むしろ政府の債務は実質的に減っていることになる。日本の財政見通しは、悪くなるというよりむしろ、大きく改善しているのだ。
ギリシャのように国債危機に陥るのではないかと不安視する向きもある。しかし、ギリシャは独自の通貨を持たない国であり、日本とはまったく違う。
仮に日本の財政問題が危ないとマーケットが判断した際にも、そのときは金利が上がるのではなく、通貨『円』が売られ、円安が進むというシナリオが起こるだけだ。円安になるのは、果たして日本経済にとって悪いことだろうか。安倍首相の経済政策を、樽に入った豆腐を配るような『利益誘導型』の古い経済政策に戻ったと批判する者もいる。しかし、日本をデフレから脱却させるために必要なのは、何にカネを使うかということよりもどれだけカネを使うか――つまりこれは、質より量の問題なのである」
しかしクルーグマンはこうもいっているのだ。
「残された問題は、いまはまだ唱えられている段階の政策が実行された際に、十分強力であることを維持できているかどうかだ。いざ実行に移す際に見かけ倒しに終われば、人々の期待感は一気に消えてしまうだろう」
週刊現代は「アベノミクスに反対する人たちへ」という特集も組んで、ハイパーインフレはありえない、必ず給料は上がると主張しているが、やはり心配なのはあの人のここなのだ。
「アベノミクスに不安があるとすれば、その政策の是非よりも、安倍首相に真の『実行力』があるかどうかだ。たとえば、3月に決まる日銀の総裁人事で市場の期待を裏切れば、今のバブルな雰囲気はあっという間に弾け、文字通り泡沫のように消えてしまうだろう。
『仮に財務省出身の武藤敏郎氏が日銀総裁になれば<武藤ショック>が起こり、株価は失速するでしょう。財務省、日銀と無関係で金融緩和に積極的な人を総裁に任命すれば、安倍政権が官僚をコントロールしていることが示せてさらに株価は上がると思います』(田中氏)※田中秀臣上武大学ビジネス情報学部教授=筆者注
重要なのは、せっかく泥の中から立ち上がつた日本経済を、またしても腰砕けにさせないことだ。今は、この先に『新しいニッポン』があると信じ、力強く前へと進むべきではないか」
これから安倍総理が「本物の総理の器かどうか」が試されるのだ。浮かれるのはまだ早い。