北朝鮮を笑えない…戦前知る老哲学者「安倍さんは憲法改正のきな臭さ自覚してるか」
哲学者の木田元が『新潮45』2月号でこんなことを書いている。木田は憲法改正に賛成する国会議員の割合が89%にものぼったことにビックリし、自分の手で稼いで飯を食ったこともなければ、徴兵の恐怖も知らない人間が「国防軍」などと勇ましいことを口走るのは、「どうにも危なっかしくてなりません。安倍晋三さんは憲法改正が『きな臭い』ことだという自覚を本当に持っているんでしょうか」と難じ、こう続ける。
「誰に言っても信じてもらえないでしょうが、私たちの世代が知っている戦前の日本に一番似ているのは、今の北朝鮮です。変な体操をしたり、マスゲームをしたり、われわれもよくやらされましたし、貧しい食糧の配給制度なんかもそっくりです。台湾・朝鮮・満州といった植民地をヌキにした当時の日本と今の北朝鮮は似ている。日本のような小さな国が世界を相手に戦争すると、ああいうことになるものなんです。
だから、北朝鮮がミサイル発射に成功したときのニュース番組など、みんな笑っているけれど、『国際連盟脱退』や『大本営発表』を知っている身としては笑えないんです。戦前の日本の小作民なんか、娘を売って得た金や、軍隊に入った息子の仕送りでやっと税金を払ったりしていたんですから、今の北朝鮮より貧しかったかもしれません。敗戦後の貧困は言うまでもありません。今の若者に、そうした感覚が共有できるでしょうか」
尖閣諸島をめぐる日中の対立は深刻さを増してきている。今こそ「戦後民主主義」という言葉を思い返し、再び不幸な時代を若者たちに迎えさせてはいけないと、分別ある大人たちが声高にいわなくてはいけない。