大津市立中学校で2年生の男子生徒(当時13)がいじめを苦にし自殺してから1年3か月、市の第三者調査委員会(委員長・横山巌弁護士)による最終調査報告書が越直美市長に提出された。
調査は生徒を中心に56人から聴取し、聴取にかかった時間は95時間に及んだという。日常茶飯にいじめが行われ、複数の生徒がこれを目撃し教師にも訴えていたのに、適切な対応が取られなかったのはなぜなのか、男子生徒が自殺にいたるまでの経緯はどうだったのか。
友人証言「『死にたいねん』と首に抱きつき泣きじゃくり」
報告書について、調査委のメンバーとして調査に携わった教育評論家の尾木直樹委員は、「読んでもらえればわかるが、リアルに解き明かされていると思う」と述べている。報告書は学校側が、自殺するまで「いじめの認識はなかった」「生徒の自殺の要因には家庭内の暴力があったのではないか」としていた点を否定した。
その根拠として、教室内で生徒が何度も殴打を受けているのを他の複数の生徒が目撃し担任に訴えていたこと。複数の教師が「いじめがあるのでは」との認識を持っていたにもかかわらず、情報が共有されず適切な対応が取られなかったことを挙げている。
また、「大津市教育委員会は訴訟をにらんだ法的責任論を重視するあまり、いじめと自殺の因果関係を否定したことから、『家庭内の暴力が要因では』という虚構を作り出し、事実関係の解明を怠った」としている。
とくに、いじめと自殺のつながりで、報告書がつぶさに触れたのは親しい友人の次のような証言だ。「生徒がある日、親しい友人の家に泊まった際に、突然泣きじゃくりながら首に抱きついてきて、『暗くて静かな山の中に行って死にたいねん』と。『家で辛いことがあったのか』と聞くと首を横に振り、『学校?』と聞くと首を縦に振った。さらに『学校でどんなことがあったのか』と聞いたが、一切話さなかった」
尾木直樹委員「死ぬ前日に机整理し、小学校の写真」
尾木はいじめと自殺の因果関係ついてこうも語った。「毎日がいじめだったんです。中間テストの時もいじめられた。その事実と死にたいと思う気持ちがどう高まっていったのか追ったところ、生徒が自殺する2、3日前も親しい友人に『俺、死にたいよ』と言っているんです。死ぬ気持ちが高まった前日には、机の上も整理し、小学校の写真を置いて態勢が整っていた」
市教委や学校が「家庭内に暴力があったのでは」と発言したことに対し、調査委が「虚構だ」と断定したことについて尾木はこう付け加えた。「虚構という言葉を使ったが、ボクは捏造が行われたと思います。これが今回の最大のポイント。重大な問題で、閉鎖社会の中でこんなことまでやるとは最悪な事例だと思う」
吉永みち子(作家)「虚構をつくってまでなにを守ろうとしていたのですかね」
尾木「この学校は2年間、道徳教育指定校になっており、モデル校だった。そこでいじめがあったとは言えなくなっちゃった」
報告書について、越市長は遺族の了解を得られれば大津市のホームページに掲載するという。