「逆らえば代表からはずされる。『死ね!』と言われ、平手打ちされたり、暴力、暴言、脅しに怯え苦しんでいる」
柔道女子のトップ選手15人が連名で日本オリンピック委員会(JOC)に提出した園田隆二監督らの暴力に対する告発文はこんな内容だったという。JOCと全日本柔道連盟の専務理事が記者会見で釈明したが、弁解・言い訳に終始した。
全柔連「監督・コーチ交代いまのところ予定ありません」
全柔連の小野沢弘史専務理事の説明によると、昨年9月下旬(2013年)に園田監督の暴力について指摘があり、10月に執行部で協議して始末書を提出させ厳重注意する処分を行ったという。しかしこの時、全柔連が事態を非公開にしたことで、闇に葬ろうとしていると反発した選手たちは、その翌日に15人の連名で告発文を作りJOCに提出した。
JOCの市原則之専務理事によると、告発文は「監督・コーチ陣による選手への暴力、暴言、脅しに怯え苦しんでいる」「練習中『死ね!』と言われた」「顔は笑っても気持ちは怖かった」と訴えていた。告発文だけでなく、12月24日にはJOCの専務理事宛にメールで嘆願書が届いた。メールには「人事の見直し」「問題解決まで合宿などの凍結」「適切な第三者による調査委員会の設置」の3点の要望があり、園田監督退任の要望に近い文言もあったという。
ただ、JOCには全柔連の決めた人事に口を挟む権限はない。選手たちの繰り返しの要望にも、全柔連は今のところ動く気配はない。会見で記者から監督・コーチの入れ替えの予定を問われた小野沢専務理事は「現時点ではありません」と答えている。
JOC苦虫「オリンピック・パラリンピック招致の足引っ張られる」
JOC・全柔連の大甘対応をスポーツジャーナリストの二宮清純氏はこう解説する。「五輪に出場するような、代表候補になるような選手は『しごき』に近いことは経験させられているし、非常に意識も高い。そういう選手たちが集団訴訟みたいな形で訴えたのですから、これは異常ですよ。相当深刻なことがあったのだと思います。
JOCは全柔連の上部組織ではないので人事を決めることはできないが、JOCとしては五輪・パラリンピック招致活動をやっており、速やかに解決してほしいというのが本音でしょう。全柔連からすれば、五輪で一番メダルが期待されるのが柔道だというプライドの高い組織で、『口を出さないでくれ』というのが本音。JOCとはかなり温度差がある」
コメンテーターの玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「この監督による暴力問題は、大阪市立桜宮高の体罰問題と無関係とは思えません。教育とか指導は、選手が自分で考え自分で切り開き、力をつけさせるためにあるわけですが、『こうやれ、こうやるんだ』と、そのためには体罰も必要だという点で共通している」
それにしても、五輪代表選手の監督・コーチが暴力、暴言の常習者では恥ずかしい。しかも抜本的な解決の道を探ろうともしない。来週2月5日(2013年)には園田監督が選手を率いて、暴力行為があったといわれる欧州遠征に出かける。選手は怯え続けながら試合をするのだろうか。