やっぱり、この時間帯は面白いっ。10回連続の今度の主演は濱田岳だ。主演の役者が毎回違う人物を演じ、共演者だけが変わるという趣向は、前の「イロドリヒムラ」(2012年10~12月 日村勇紀主演)と同じである。
今度はそれに「終電」という要素が加わって、場所は「駅」、時間は「深夜」と限定される。数々の「しばり」を設定して挑戦する制作スタッフの遊び心が伝わってくる。
終電終わった「立川駅前」いい年した連中が「ドロ警」で大はしゃぎ
第1回は立川駅。終電を逃した佐藤(濱田岳)が、深夜のベンチで必要以上に怯える独白(内心の声)が可笑しい。深夜、家を出て、公園のアート作品と闘う引きこもりの中年男(古舘寛治)の奇妙なリアリティは、確かに怖いと言えば怖い。
それに、人通りのない駅周辺で、全速で追い追われる男たちの集団。何なんだ、これは! その謎が分かると、私も「わーい」と大喜びしてしまった。なんと彼らは、終電が終わって誰もいなくなった街を使って「ドロ警」をやっていたのだ。ドロボウ組と警察組に分かれて、追いかけ、捕まえ、牢屋に入れるあの遊びである。
思い出す。畑だろうと、ひとの家の垣根だろうと、踏み越え飛び越えて全力で逃げ回った。捕まって両側からガッチリ押さえ込まれ、むちゃくちゃに大暴れして抜け出すあの快感。「ドロボウごっこ」と言ってたっけ。「ドロボウ」という言葉が悪いというので学校で禁止されたけど、「追っかけめっけっこ(追いかけ見つけごっこ)」と言い換えて子供たちは毎日遊び続けた。大人になったって、やりたいよね。
「秋葉原駅」で恋が終わり、「南千住駅」でフランス女との淡いロマンス
第2回は秋葉原駅。毎回、謎の案内人(谷中敦)が何らかの役で登場し、駅の説明をするのだが、これが楽しい。芝居は見たことないけど、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦って達者だね。
ここでは「テーブルトークRPGゲーム(TT)」という超アナログなゲームが出てくる。あり得ないとは思いつつも、「もしかしたらあるのかも…」と一瞬思ってしまうところが、深夜のドロ警と同じだ。秋葉原で主人公は恋の終わり、いや、彼女とちゃんと付き合えてもいなかったことを知る。苦くても一夜で成長した男は、もう秋葉原には来ないだろう。心が静かにチクンとする終わりである。
第3回は南千住駅。外国人に安い宿として知られている山谷の元ドヤ街に近い。ということで、出会いは国際的になり、主人公は思いもよらず、パレスチナとイスラエル、それに絡むフランスとアメリカの立場まで垣間見ることになる。若いフランス人女性との淡いロマンスに泣けた。そして、彼女の「世界は広いけど、人は狭い周りの人々と生きている」という言葉に共感。(TBS系月曜深夜0時20分)
(カモノ・ハシ)