安倍内閣がデフレ脱却を掲げるなか、連合と経団連のトップ会談が行われ春闘が始まったが、タマゴが先かニワトリが先かで、労使の主張はまったくかみ合わなかった。相変わらず貧乏神みたいなことをいう経済界首脳で、果たして給料は上がるのか。
サラリーマン平均給与ピーク467万円から今は407万円
国税庁によると、民間企業の給与所得者の平均年収は1997年の467万円をピークに減少し、リーマンショックもあって11年には407万円まで下がっている。このデフレスパイラルから脱却するには、アベノミクスの論理では経済環境を整備しつつ賃上げを実現できるかが最大の焦点となる。このため、平成25年度税制大綱では、従業員の給与を増やした企業には増加分の10%を法人税から差し引く優遇制度を盛り込んだ。
そこで29日(2013年1月)の労使トップ会談では、連合の古賀伸明会長が「GDPの約6割に当たる個人消費を活性化しなければならない。そのためには所得を上げる必要がある」と、給与総額の1%を目安とする賃上げを主張した。
ところが、経団連の米倉弘昌会長は「本当に企業が元気を出して景気が良くなり、そこで初めて経済が成長して雇用が創出できる。(先の見えない)今の状況では上げられない」と依然として内向きの答えだ。別の経団連幹部も「給料を一度上げると下げられなくなる」と、とにかく賃金を抑えようと身構えている。
麻生財務相「会社利益出してるのに株主配当にも給与にも回ってない」
こうした経団連の姿勢に、政府も批判的だ。麻生太郎財務・金融相は「会社は利益を出している。その利益が配当に回っている傾向はない。給与にも回ってもない。利益はどこにいっているのか。会社の内部留保になっている」と手厳しい。甘利明経産相は「政府はデフレ脱却に取り組んでいる。日本経済の主たる構成員である民間経済主体も同様の責任感を感じて欲しい」と訴えた。
コメンテーターの萩谷順(法政大教授)はこう言う。「民主党政権と違って、いつ給料が上がるかが話題になるというふうに雰囲気は変わってきた。麻生さんが『会社の内部留保に溜まっている』と面白いことを言っていたが、実はこれは共産党が言ってきたことなんです。麻生さんと共産党の主張がほぼ似てきたのは面白い現象だが、内部留保を抱えている大企業は一歩先に出て欲しい。そういう時期が来ていますよ」
辛気臭い、貧乏神みたいなことを言っていた経済界のリーダーが、心機一転しなければデフレなど脱却できない。