きのう28日(2013年1月)の安倍晋三首相の所信表明演説は、文字数にして約4700字、時間にして18分52秒、最近の首相の所信表明演説に比べて短いものだった。2006年の第1次安倍内閣発足の演説では「美しい国、日本」を掲げ、自らの理念を前面に出したが、今回は「安倍カラ―」を抑え、経済再生を中心にコンパクトな内容になった。参院選を控え、安全運転に徹し、重要な問題を隠したとの批判もある。「朝ズバッ!」は「けさの顔」「おでかけ前の朝刊チェック」「8時またぎ」のコーナーで取り上げた。
「衣の下の鎧」いつ見せるか?
アナウンサーの加藤シルビアがフリップを持って説明する。「主に語られたのは、経済再生、震災復興、外交・安全保障。一方で、触れられなかったテーマは憲法改正、教育改革、TPP、原発政策、議員定数です」
コメンテーターの杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)は「フリップを見てお気付きと思いますが、主に語られた3つには反対がないんです。触れられなかったテーマはそれぞれ賛成、反対が二分するテーマなんです。それを避けて、みんなが賛成するテーマに絞ったのは、参院選挙に勝つために大事なことを隠したと私はみます」と言う。
三屋裕子(スポーツプロデューサー)「TPPやエネルギー問題は経済の問題に深くかかわってくる問題で、そこに言及しなかったのはちょっと物足りない」と言い、潟永秀一郎(「サンデー毎日」編集長)は「(触れられなかった)憲法改正は彼の悲願ですから、いつカードを切るのか、そこが注目される。衣の下に鎧が隠れていると自民党の幹部も言っていました」
衆参ねじれ解消が至上命題。すべてはそれから…
政治や経済の専門家たちはどう見たのか。政治評論家の有馬晴海氏は「参院選で衆参のねじれを解消して強い内閣をつくるのが第一の目標ですから、7月の参院選までに景気対策をとにかくやる。それを示したうえで、国民の支持を受けたいという思いが非常に強い」といい、経済評論家の荻原博子氏は「見えないのが成長戦略。これがちゃんと軌道に乗らなければ、ただ借金が増えて終わってしまう。大金をばらまいて最後の大勝負をかけるわけだから、重責をしっかり感じてほしい」と注文を付ける。
「8時またぎ」コーナーには金曜日のコメンテーターの与良正男(毎日新聞論説委員)も出演し、「憲法改正も含めて安倍カラ―を封印し、参院選に勝ったら安倍カラ―を出す、長期政権になるから国防軍だというのは、有権者に対する欺瞞になる」と警告する。その通りで、今回出てこなかった重要な問題を引き出し、政権の欺瞞性を暴くのは野党の役目だ。もっとも、本番である2月下旬の施政方針演説では長広舌を振るい、今回触れなかった憲法改正や原発問題でアドバルーンを上げるということかもしれない。