「三つ星」20年間を守り続けてきたパリの高級レストラン「カルゴ・ラガルド」の看板シェフ、アレクサンドル・ラガルド(ジャン・レノ)は、スランプに陥っていた。次のミシュランの審査で星を一つでも落とせば店をクビになると追い詰められているのだが、まったく新メニューが思いつかないのだ。そんな時、有名シェフのレシピを正確に再現できる天才的な舌と腕前がありながら、周囲とのトラブルでいくつものレストランを渡り歩いてきた無名のシェフ、ジャッキー・ボノ(ミカエル・ユーン)と出会う。
三つ星を守りたいアレクサンドルは、すがるようにジャッキーに新メニュー作りの協力を求め、老人ホームでペンキ塗りをしていたジャッキーも喜んで応じる。頑固一徹のアレクサンドルと直感を信じる料理オタクのジャッキーが、審査員たちをうならせることができるだろうか。
軽妙洒脱なフランスコメディー
フランス映画らしい軽妙洒脱なコメディーだ。あちこちに笑いどころが散りばめられている。ミシュランの調査員が分子料理に関心があると知った2人は、分子料理を得意とするライバルシェフの店に変装して視察に行くのだが、そのときの変装がノグチ夫妻というサムライとゲイシャ。このビジュアルがヘンテコで笑える。『レオン』のダンディな殺し屋から某自動車メーカーのCMでドラえもんまでこなすジャン・レノだもの、こんなのは朝飯前なのでしょう。
でたらめな日本語をでたらめにしゃべって(「アリガト」「コニチワ」の連続)、ライバルシェフをだますのだけれど、これは日本の観客向けのギャグなのかもしれない。こんなバカっぽい笑いって、アメリカのお家芸だと思っていたけど、フランス映画もなかなかやりますネ。
ミシュランガイドで三つ星に昇格すると世界中から予約が殺到するが、一つでも星を落とすと客足が途絶えてしまうことも珍しくないという。コメディー映画であるが、そんな高級レストランのシビアな現実もしっかり見せ、最高の料理に不可欠なものは高級素材や高度な技術ではなく「愛」であると、まあ言わずもがなのオチでしめくくっている。痛快で爽やかな余韻が楽しめる佳作だ。
バード
おススメ度:☆☆☆