「私は韓国では生きていけません。お母さん申し訳ないけど、最初から息子はなかったものと思ってほしい」
元読売巨人軍投手の趙成珉(チョ・ソンミン)が母親宛にこうメールを残し亡くなった。警察では自殺とみて調べているが、「モーニングバード」の取材によると、またネット社会の行き過ぎた言論の存在が浮上している。
恋人のアパートのシャワールーム…革ベルトで首つり
趙は6日未明(2013年1月)、韓国・ソウルにある恋人のアパートのシャワー室で、革のベルトで首を吊った状態で発見された。発見したのは恋人で、前夜、別れ話を切り出された趙は亡くなる直前に恋人あてのこんなメールも残していた。「私の人生の最後をあなたと一緒に迎えられなくて胸が痛い」
ただ、失恋の痛手というより根はもっと深いようだ。アマチュア球界のエースとして活躍していた趙は、1996年に異例の8年契約で巨人に入団した。2000年には国民的人気女優だった故・崔真実(チュ・ジンシル)と結婚。しかし、けがに悩まされて11勝10敗11セーブと成績は振るわず、契約を1年残して02年に退団し、そこから転落の悲劇が始まった。
元妻チュ・ジンシルの自殺でも「殺したのはお前だ」
04年には妻への暴力で逮捕され離婚し、その元妻は離婚から4年後に2人の子供を残して自殺した。原因はネット上で金銭問題を誹謗中傷する書き込みをされ、耐えられなかったからと言われている。元夫である趙へも「殺したのはお前だろう」という非難の書き込みが殺到したという。
それでも、おととしから韓国プロ野球チームのコーチに就任して再起を図っていたが、昨年11月に暴力事件を起こし、再契約できずに失職していた。趙は亡くなる3日前に親友に悩みを打ち明けていた。親友は「昨年11月の暴力事件でメディアやネットでたたかれ、すごく悩んでいる様子だった」という。
元共同通信の記者で、韓国特派員の経験がある青木理は「国民性もあるでしょうが、インターネットに書き込まれた言論を大手マスコミが紹介するなど影響は日本よりもある」という。
国民性といえば、自殺の多さも際だつ。韓国統計庁によると、11年の自殺者数は1日当たり43.6人、OECD加盟国で1位だ(日本は3位)。青木によると、発展が急速だったために、財閥が力を持った割には一般庶民の暮らしは貧しいという。他人を自殺に追い込むほどネットで誹謗中傷するのも、いびつな競争社会、格差社会への憂さ晴らしだと分析している。