テレビ取材お断りの怪しい世界
奥谷監督にタブーを打ち破るというような意識はない。テーマを追うスタイルではなく、観察するように観客と同じ視点を持ち続ける。この視点は、10年という歳月が与えた監督の「学生の好奇心」が「生活」へと変わっていく心境として伝わってくる。本来は取材を受けないという興行者たちが、奥谷監督の前では笑いながら語る。監督の若さ、迷い、未熟さがかえって垣根を取り払う安心感を与えているからだろう。
興行者が語る回想は見世物小屋の歴史で、その繁栄の時代を知らない奥谷監督のリアクションがこの映画の狙いなのだ。テレビのドキュメンタリーではなかなかこういう興行者たちの素顔は捉えられないだろう。
興行が終わった興行者たちの姿がとくに印象的であった。小屋をたたみ、荷物をトラックに積み、また次の町へと向かう。小屋は消えてしまうが、たしかにそこに「見世物小屋があった」という記憶は残っていく。 筆者も「靖国神社みたままつり」で興行を見た庫ことがあるが、それは恐くて、おもしろくて、どこか懐かしい想いを抱かせてくれた。その空間にはテレビが映す嘘がないのだ。
川端龍介
おススメ度☆☆☆☆