樹齢数百年の神社のご神木を次々と狙う罰当たりな事件が四国を中心に多発している。愛媛県東温市の総河内大明神社の境内にある樹齢500年以上というご神木2本が、枯木と診断され26日(2012年12月)伐採される。綿崎祥子宮司によると、2本のご神木の根元にドリルようのもので5、6か所の穴が開けられていたので調べたところ、直径5ミリ深さ4センチの穴から除草剤が検出されたという。
宮司は「悲しいを通り越して、悔しいとか空しいとか言葉にならない」と憤る。近隣住民も「このお宮さんは、あの2本のご神木で持っているようなもの。ご神木がなくなるなんて考えもしなかった」と嘆く。
愛媛、高知など四国各地で頻発
罰当たりの犯行は総河内大明神社だけではなかった。やはり愛媛県の西条市にある大宮神社でも昨年4本のご神木が枯れて伐採された。十亀博行宮司は「葉っぱだけ見ると寿命なのかなと思ったが、木の根っ子に穴が開いていることが分かり、なんと罰当たりなことをするものだと思いましたね」という。
2つの神社に共通していたのは、ご神木が枯れるタイミングを見計らって木材業者が現れ、「枯れた樹は危ない。自分たちが伐採し買い取る」とご神木を引き取っていったことだった。事件は高知県でも頻発しており、ここ数年でご神木以外の木を含めて14件が確認されている。
枯れたご神木を調査している日本樹木医会高知県支部の藤本浩平博士は、「養分を木の中へ送るのは縁の部分4センチのところで、そこに除草剤を注入されると2~3か月で枯れる」という。
樹齢数百年の大木―希少価値で高値取引
背景には樹齢数百年の大木は木材として非常に貴重で、とくに信仰の対象であるご神木となると、台風で倒れでもしない限り伐採されることはない。希少価値のため、寺や一般建築で根強い人気があるという。
コメンテーターの萩谷順(法政大教授)は「養分を送る樹皮の裏側に除草剤を入れれば、樹の真ん中はしっかりした状態が残る。それを知っているプロの計画的犯罪で、罰が当たるといいなと思う」と顔を曇らせる。
神社は樹齢数百年のご神木も含め、日本人の心のふるさとである。ここまで落ちたかと残念でならない。