<ルビー・スパークス>
夢から出てきた女性を「理想の恋人」に仕立てる内気な青年…ちょっと怖いラブストリー

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(C)2012 Twentieth Century Fox
(C)2012 Twentieth Century Fox

   「クリスマス前に、できればカップルでの見るのが望ましい」なんて注意書きをつけたくなるラブストーリーだ。でも、主題は恋愛かというとそうでもない。ちょっと語弊があるかもしれないけれど、個人的には「冴えない男の成長譚」とまとめたい。

タイプライターに打ち込めば思い通りの彼女に変身

   主人公のカルヴィンの職業は作家だ。10代のデビュー作でアメリカ文学史に残る大ヒットを記録した「天才」だが、2作目が書けないままもう10年になる。丸眼鏡にひょろりとした長身で、友達がいない。彼女もいない。頻繁に会うのは実の兄とセラピーの担当医師の2人である。人とのコミュニケーションにいささか難があり、自分を持て余している。

   そんな彼に奇跡が起こる。夢の中で出会った架空の女性「ルビー・スパークス」が現実に現れたのだ。カルヴィンがタイプライターに「彼女はフランス語がしゃべれる」と打ち込めば、彼女はフランス語がしゃべれるようになり、「機嫌が良くなる」と打ち込めばその通りになる。奔放で気まぐれな彼女とのロマンスに、カルヴィンはすっかり夢中になった。

   だが、楽しいばかりではないのが恋愛である。四六時中一緒にいたいと願うカルヴィンに対して、「週に1度は離れましょう」とルビーは提案する。このあたりから、カルヴィンの「才能あふれる内向的な青年」以外の面が見えてくる。自分が辛い時に無条件で支え、尽くしてくれなきゃ何の意味もない。自分に嫌な思いをさせてまで奔放にふるまうなんて、彼女として正気だと思えない。えんえんと続く束縛と「理想の彼女」像の押しつけは、痛いというか怖い。そして、自分から離れようとするルビーに、カルヴィンは禁断の手を使う。再び「ルビー・スパークス」の物語に手を入れ始めたのだ。

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