参院選まで待てない安倍首相!持病悪化恐れ後先考えず突っ走る危険

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官僚にとって野田首相より扱いやすい「戦後復興プログラム」復活政権

「自民党勝利の前から、『政権交代』は起きていた――それが私の実感である。野田佳彦・首相時代に、すでに『官僚独裁主義』は完全復活を遂げていたからだ。彼は財務省の言いなりとなって消費増税を断行し、各省庁の希望通りに公共事業を復活し、民主党がマニフェストに掲げた『脱官僚』や『コンクリートから人へ』といった改革への期待を裏切った。
   今回勝利した安倍自民党は、単にその流れを引き継いだに過ぎない。官僚にとっては、野田政権よりさらに扱いやすいだろう。(中略)
   安倍氏は『日本は経済再生のためにお金を使うべきだ、公共投資が必要だ』と繰り返し説いている。だが、そのお金はどこに流れていこうとしているのか。国会議員たちが自分たちの選挙区向けに全く必要のない橋やトンネルにお金を注ぎ込む。これまで慣れ親しんだ『戦後復興プログラム』そのものではないか。
   かくして、本気で改革の舵取りをしようとする政治家を押しのけて、自動操縦装置任せで目先の利益に左右される政治家が選ばれた。そして、『日本というシステム』の一翼を担ってきた自民党政権が復活したのだから、この選挙結果は確かに悲劇というほかない」

   これは「週刊ポスト」の巻頭に載ったカレル・ヴァン・ウォルフレン・アムステルダム大学名誉教授の言葉である。ウォルフレンはこうした悲劇から脱却する鍵となるのは若者たちだという。しかし、いまの若者たちには政治に対する正しい情報がメディアから与えられておらず、官僚にとって都合のいい無関心な状態に置かれている。そこから彼らが目覚め、新聞を疑い始めたときに本当の変化が起きる。その時期は決して遠い将来ではないと説いている。

   若者たちが覚醒することはあるのだろうか。私はその考えにやや否定的だが、今度の選挙で、とんでもない選択を日本人はしてしまったという思いは同じである。自公で325議席。それに日本維新の会の54議席を合わせれば圧倒的な数になり、その数はかつてないほどの力を安倍晋三総理に賦与することになるはずだ。

   景気浮揚対策との名目で大企業やゼネコンへのカネのばらまきが始まり、消費税は予定通り上がり、TPPに参加し、社会福祉や脱原発はなおざりにされる。対米従属をさらに強め、自衛隊を国防軍にし、集団的自衛権行使を容認する国家安全保障基本法を制定し、そのすぐ先には安倍のライフワークである憲法改正がある。普通に戦争ができる国に変容させ、力を背景にして中国、韓国と渡り合えば、最悪の事態も予想される。

6年前のトラウマ。病を抱え「できるうちにやってしまおう」と焦り

   参議院選挙が来年夏にあるから、それまで安倍は動かないと見る向きがあるようだが、どうだろうか。私には彼が抱えている病が気がかりである。どれ程の重さかわからないが、病を抱えた人間は物事を性急に行う傾向がある。私は小学校、高校で2度の肺結核にかり、2年間を棒に振ったことがあるからよくわかるのだが、刹那主義に流れやすくなる。

   また、病のために政権を投げ出さなくてはならなくなるという不安から、できるうちにやってしまおうという思いにとらわれ、後先考えずに突っ走ってしまうのではないかと危惧する。

   しかし、それを牽制する勢力は党内には見当たらないし、弱小政党に成り下がった民主党では、反対しても安倍は歯牙にもかけないだろう。安倍、石原慎太郎、橋下徹という右派トライアングルへの対抗勢力は、ほとんどないに等しいのだ。戦後初の大政翼賛政治が現実のものとなるのである。投票率が60%を下回り戦後最低だったが、投票に行かなかった10%が自民党以外に票を投じていれば、ここまでの自民党大勝はなかったはずだが、後の祭りだ。

   この体制はおそらく任期いっぱいまで続くであろう。ねじれを解消するために参議院選挙と同日選挙という憶測も流れていたが、参議院で法案を否決されても、自公だけで衆議院で再議決できる議席数があるから、いまの議席を減らすような危険は冒すまい。憲法改正には批判的な公明党が離れたとしても維新と手を組めば、改憲の是非を問う国民投票の発議を衆議院で可決することができる。

   このように大きな危惧のある自民党大勝を、東京新聞(12月17日の朝刊)だけが「維新含め改憲派3分の2」と大きく打ったが、他の新聞はただ伝えただけである。ほとんどの週刊誌も選挙中は議席数がどうなるかに終始して、そうなればどういう恐ろしいことが起きるのかを読者に伝えてはこなかった。メディアの怠慢ここに極まった。戦後レジームからの脱却を目指すという安倍だが、それは誤った戦争へ突き進んだ戦前への回帰にならないか心配である。

橋下徹切り水面下で進行!「日本維新の会」分裂必至

   各誌の選挙関連記事を読み比べてみたが、ここに紹介するものは何もなかった。少し気を引かれた「週刊新潮」の「動き出した『橋下リコール』激化する『内部ゲヴァルト』」を読んでみた。200議席獲得を目指していた「日本維新の会」だから、54議席で満足するはずはないが、やはり「たちあがれ日本」と組んだことの後遺症があちこちから噴き出してきているようだ。「たちあがれ」から合流し、比例で当選を果たした西村眞悟代議士はこう憤る。

「旧大阪維新の会から出てきて当選した連中に国政をやらせたらメチャクチャになるわ。政策についてなんも分かっとらんのに、ただ風に乗っかって当選しただけ。彼ら数名の話を聞いたけど、国家をいかに守るかを説かず、行政の無駄を指摘するばかりやった。ミサイルが発射されても、あいつらの口からそのことに関する意見を聞いたことがない」

   私も「日本維新の会」は分裂必至と見るが、橋下大阪市長には「本丸」の大阪からも火の手が上がっているという。大阪府議会や市議会の中から不協和音が出て、過半数割れや公明党が連携を解消する動きがあるというのだ。議会運営に支障が出てくるかもしれない。

   さらに、「職場放棄」を主な理由として橋下をリコールしようという動きが急だという。橋下市長が衆院選公示後、投開票日の16日までに市長として公務を行ったのはたったの1日だけ。12月3日に市長給与の返還などを求めて大阪市民6人が大阪市に監査請求を行った。それを仕掛けた市民オンブズマン「見張り番」代表世話人の辻公雄弁護士がこう語る。

「今回の選挙に際し、石原さんと組んだことで橋下市長の人気は落ち、批判や不満が増えている。いよいよリコールが現実味を帯びてきたという実感があります。早ければ、年内にでもリコールの準備に入るかもしれません」

   1度地に落ちた威信を取り戻すのは容易なことではない。橋下市長が「天下の秋を知る」のもそう遠いことではなさそうである。

息子に世襲の中川秀直元議員…引退理由は佐藤ゆかり参院議員と同じマンション住まい

   今週のポスト合併号は充実している。これもその1本。あの政界を引退した中川秀直元議員が「ゆかりタン」こと佐藤ゆかり参院議員と「一つ屋根の下」で暮らしているというのだ。

   中川元議員はまだ68歳。早すぎる引退に疑問が上がっていた。今回の選挙で息子の中川俊直がめでたく当選したが、その当選現場にも中川の姿はなかったそうだ。そのあたりから中川と奥さんの佳津子の間がしっくりいっていないのではという噂が流れているようだ。

   中川元議員には2000年に女性スキャンダルが発覚しているし、もともと彼は婿養子で、奥さんの父親の地盤を継いで議員になったため、奥さんには頭が上がらない。今回の引退も唐突で、地元の有力後援者たちが聞いたのは発表される前日だった。「小泉チルドレン」の一人で、自民党のマドンナ・佐藤ゆかりとの仲が奥さんに知られ、それが明るみに出ることを恐れて引退に追い込まれたのか?

   佐藤は中川を師と仰ぎ、側近を自任してきた。中川が住んでいるのは赤坂の議員宿舎に近い超高級分譲マンションで、そこに2部屋所有している。佐藤も彼とは違う階だが、1部屋を所有しているのだ。一つ屋根の下に、恋多き女と恋愛スキャンダルの過去を持つ男が暮らしている。それだけの情報だが、何やら匂う感じがするのは、私が議員スキャンダルを数多く追いかけてきたからだろうか。

20年後に生き残れない会社どこか?日産自動車、シャープ、パナソニック、丸紅、全日空、JAL…

   「週刊現代」に「2013年版 20年後に生き残る会社 前半」という特集がある。定番企画だが、内容は新鮮味にやや欠ける。主要647社を採点したというのだが、10点以上とった会社を見てみると、当たり前の会社が並んでいる。いくつかあげてみよう。トヨタ自動車(15点)、自動車部品のデンソー(11点)、ブリヂストン(13点)、ファナック(10点)、コマツ(10点)、日立製作所(12点)、三井物産(13点)、三菱商事(14点)、ヤマトHD(11点)などなど。

   こういう記事は、生き残る会社はどこかを見るより、生き残らないと思われる会社を見てみるほうがおもしろい。たとえば、日産自動車は4点、シャープは0点、パナソニックは1点だ。丸紅は4点で、全日空も4点、JALは1点である。同じ業界同士でも淘汰され、消えていく会社はどこが間違っているのか?。もっと絞り込んでじっくり書いてもらいたい企画である。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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