6年前のトラウマ。病を抱え「できるうちにやってしまおう」と焦り
参議院選挙が来年夏にあるから、それまで安倍は動かないと見る向きがあるようだが、どうだろうか。私には彼が抱えている病が気がかりである。どれ程の重さかわからないが、病を抱えた人間は物事を性急に行う傾向がある。私は小学校、高校で2度の肺結核にかり、2年間を棒に振ったことがあるからよくわかるのだが、刹那主義に流れやすくなる。
また、病のために政権を投げ出さなくてはならなくなるという不安から、できるうちにやってしまおうという思いにとらわれ、後先考えずに突っ走ってしまうのではないかと危惧する。
しかし、それを牽制する勢力は党内には見当たらないし、弱小政党に成り下がった民主党では、反対しても安倍は歯牙にもかけないだろう。安倍、石原慎太郎、橋下徹という右派トライアングルへの対抗勢力は、ほとんどないに等しいのだ。戦後初の大政翼賛政治が現実のものとなるのである。投票率が60%を下回り戦後最低だったが、投票に行かなかった10%が自民党以外に票を投じていれば、ここまでの自民党大勝はなかったはずだが、後の祭りだ。
この体制はおそらく任期いっぱいまで続くであろう。ねじれを解消するために参議院選挙と同日選挙という憶測も流れていたが、参議院で法案を否決されても、自公だけで衆議院で再議決できる議席数があるから、いまの議席を減らすような危険は冒すまい。憲法改正には批判的な公明党が離れたとしても維新と手を組めば、改憲の是非を問う国民投票の発議を衆議院で可決することができる。
このように大きな危惧のある自民党大勝を、東京新聞(12月17日の朝刊)だけが「維新含め改憲派3分の2」と大きく打ったが、他の新聞はただ伝えただけである。ほとんどの週刊誌も選挙中は議席数がどうなるかに終始して、そうなればどういう恐ろしいことが起きるのかを読者に伝えてはこなかった。メディアの怠慢ここに極まった。戦後レジームからの脱却を目指すという安倍だが、それは誤った戦争へ突き進んだ戦前への回帰にならないか心配である。