選挙が終われば組閣だ。次期首相となる自民党の安倍晋三総裁は党役員と内閣の人事に着手した。幹事長には石破茂氏の続投が決まり、官房長官には懐刀といわれる菅義偉幹事長代行が内定した。安倍は新内閣を「危機突破内閣になる」と位置づけ、来年の参院選勝利に全力をあげる考えだ。「朝ズバ!」では、金曜日のコメンテーター与良正男(毎日新聞論説委員)をまじえ安倍新内閣の顔ぶれを占った。
6年前は「お友達内閣」で失敗
幹事長の留任が決まった石破について、与良は「本人は閣僚の気持ちもあったが、来年の参院選をにらみ、人気があるのと安倍さんと一蓮托生の気持ちが出てきた」と解説する。副総理で財務相とみられているのは麻生太郎元首相。「安倍政権誕生の最大の功労者ですから」と杉尾秀哉(TBS解説・専門記者室長)が解説する。緊急課題である経済の立て直しを担う経済再生担当相は甘利明政調会長、連立を組む公明党からは太田昭宏前代表が国土交通相に起用される見込みだ。
与良は安倍人事について、「女性閣僚や党役員をたくさん起用するであろうといわれています。タカ派的イメージを薄めるのと、女性閣僚の少なかった民主党との違いを出す狙いもあります」といい、候補として小池百合子元防衛相、小渕優子元少子化担当相、高市早苗元特命担当相らの名前を上げる。小池は「公約」通り、長く伸びた髪を切ると宣言し、小渕は「中堅議員として重責を果たしていきたい」と意欲を見せている。
6年前の安倍内閣は「お友達内閣」と揶揄され、失言や事務所費問題で辞任に追い込まれる大臣が相次いだ。杉尾は「安倍さんには人事のトラウマのようなものがあって、その時の失敗を絶対繰り返したくないと思っている」という。
政権戦略は「経済立て直し→来夏の参院選勝利→9条改憲」
今後の安倍の政権運営について杉尾は2段階論だと解説する。「憲法9条改正が悲願だが、1度にはやれない。まず憲法改正発議の要件を今の衆参3分の2以上から過半数に変える。しかし、今それをやれば反発されるので、経済を立て直して来年の参議院選に勝って9条改正につなげるという戦略だ」
経済立て直しの方策として「大型の補正予算を組み、大幅な金融緩和をするという2本立てですね。しかし、金をジャブジャブ出せばいいってものじゃない。魔法の杖はない。成長戦略をどうするか、複合的な取り組みが大切だ」と話す。
衆院選で勝利した政権が次の参院選で敗れて、衆参のねじれを招くのが最近のパターンだ。安倍も前回首相のとき参院選で惨敗、民主党も衆院選で大勝して政権交代を果たしながら、翌年の参院選で敗れた。今回の自民党の歴史的勝利も小選挙区の凄まじさを見せつけた結果だが、コメンテーターの田中章義(歌人、作家)は「本当に民意を反映できている選挙制度なのか。政権が風でどっちかに行ってしまうような選挙制度は考え直してほしい」と注文をつけた。