ある殺人事件の容疑者が捕まり、そして犯人しか知らないはずの事実の提供、「秘密の暴露」があった。これは有罪間違いなし――だろうか?「犯人しか知らない秘密」が、被害者の血が大量に付いた凶器が、警察の捜索範囲からかけはなれた場所から、供述通りに見つかった――とかいうことなら、話はわりと早そうだ。だが、現実はそうクリアでないことも多い。
当てずっぽに言っても当たりそうな遺留品の特徴
京都・舞鶴女子高生殺害事件で、殺人罪に問われた被告の控訴審で12日(2012年12月)、無罪判決が出た。一審では無期懲役の判決が出ており、逆転無罪となったのだ。
検察が示した間接証拠の評価が別れたというのだが、そのなかには「一審のときにはある意味、決め手になった事実」(田中良幸リポーター)があるという。被告が捜査段階で、被害者の遺留品であるポーチや下着の色や形を具体的に述べた点だ。
一審はこれを高く評価して、「犯人しか知り得ない事実を供述」したものと認めた。だが、二審は違った。供述された遺留品の特徴などはありがちなもので、犯人以外が当てずっぽうで当てることも不可能ではなさそうだといったことらしい。それに、「秘密」が犯人以外に警察も知り得ていた事実ならば、そこには容疑者への誘導や強要の危険性がつきまとう。
だいたい、どんな証拠や事実にも疑う余地はあるもので、「犯人しか知らない」もまた例外ではないのだ。
文
ボンド柳生