兵庫県尼崎市の連続変死事件で、殺人容疑などで逮捕された角田美代子容疑者(64)がきのう12日(2012年12月)に留置場で自殺した。6人が遺体で発見され、なお3人が行方不明という重大事件の主犯格とされる人物の自殺をなぜ許したのか。警察の監視態勢に落ち度はなかったのか。「朝ズバ!」は警察OBの意見をまじえて考えた。
異変気づいてもすぐ中に入れない3人部屋
疑問のひとつは「空白の11分」である。角田は兵庫県警本部の3人用の女性用留置場に入れられていたが、自殺前夜の11日午後8時35分ごろ、警察官に「体調どう?」と話しかけられ、「大丈夫です。すみませんでした」と笑顔で頭を下げ眠りについた。翌朝5時55分、巡回した女性巡査長は角田の寝息を確認している。異変を察知したのは6時10分で、寝息が聞こえなかった。巡査長が当直の職員とともに部屋の中に入り、首にTシャツの袖を巻き意識をなくている角田を発見したのは、その11分後の6時21分だった。人工呼吸を施したが、7時15分に搬送先の病院で死亡が確認された。
なぜすぐに部屋の中に入らなかったのか。元警視庁警視の江藤史朗氏は3人部屋に入れていたことが問題だと指摘する。「留置係が部屋に入る時は逃走防止のため、被疑者より多い人数で態勢を組まなければならない。3人部屋だと4人以上の警察官がいないと開けてはいけない。1人だけの単独房だと2人ですぐに入ることができた」。自殺をほのめかしていた容疑者を単独房に留置しなかったのが最大の判断ミスと指摘する。
疑問の2つ目はなぜ自殺を防げなかったのかだ。10月22日以降、留置管理課の担当者に4回にわたり「死にたい」と話し、弁護人に対しても「生きていても意味がない」などと自殺をにおわせる発言をしていた。このため、県警は特別要注意者に指定し、通常1時間に4回の巡回を6回に増やしており、落ち度はなかったといっている。
しかし、江藤氏は「24時間の監視体制をとっていなかったのは重大なミス」という。「要注意者に指定した場合は、単独房に入れ24時間1対1で対面監視するのが当然です。落ち度がなければ自殺するわけがない。今回は大失態ですね」と結論づける。
「獄中自殺」年間15件前後。WHO統計では女性収監者は男性の2倍
そもそも、そばに寝ている者がいるのに自殺することは可能なのか。元東京都監察医務院長の上野正彦氏は「『自絞死』といって、自分で首を絞めて死ぬというケースはあります。布団をかぶってみんなが寝ている時に行えば音を立てずに死ねる可能性もあるでしょう。四六時中監視していれば発見できるかもしれないが…」といっている。
この問題は「けさ単!」コーナーでも取り上げた。それによると、日本での獄中自殺は年間15件前後あり、世界的には少ない方だという。WHO(世界保健機関)は「自殺予防 刑務官のための手引き」を出しているが、自殺は収監者の死因として最も多いのだそうだ。審判前の短期拘留施設入所者の自殺率は一般社会の10倍、判決後の受刑者収容施設では3倍。また、自殺を企てる自殺企図率では女性収監者は男性の2倍という数字もある。
自殺が十分予想されていたのに、それを許した今回の対応は失態というほかない。