中央自動車道の笹子トンネルの崩落事故で、命を奪われた9人のうち、押しつぶされた保冷車の中から助けを求めていた男性の身元が判明した。東京に本社のある食品卸会社に27年勤めているベテラン営業マンだった。事故直後から3回会社に電話していたことが分かった。
正午過ぎまで応答…数秒で声途絶える!
勤務していた会社の社員によると、事故が起きた2日午前8時すぎに甲府営業所所長の留守電に2度にわたりメッセージが入っていた。内容はトンネル内のクラクションの音でかき消され聞き取れなかったという。その後、このメッセージを受けた社員が何度も電話で呼び出したが連絡が取れず、正午過ぎになってやっと1度だけ営業所の所長に連絡があった。「所長、助けて欲しい」と訴える声が聞こえたが、わずか数秒で通話は切れ、それっきりになったという。
その時点で生存が確認できたものの、救助作業は煙と熱気に阻まれて難航し、救助隊員が保冷車にたどり着いたのは午後5時ごろだった。保冷車には3枚のコンクリート板が覆いかぶさっていたという。救助隊員が車の中の営業マンに呼びかけたが、反応はなく、ハンドルの上に手を置いたまま亡くなっていた。死因は肺などの傷害による呼吸障害と見られている。
同僚「何を今までチェックしていたのか憤りを感じる」
亡くなった男性の同僚は「(道路を管理する会社は)何を今までチェックしていたのか憤りを感じる」と吐き捨てた。羽鳥慎一(司会)は「携帯のやり取り聞いていると切ないですね」と言い、放送作家の岩崎夏海も「少なくとも4時間は存命でいらした。その間、不安や痛み、苦しさを味わい恐怖もあったでしょう。切ないですね」と話す。
乗用車に乗っていた70代男性と60代と70代の2女性、レンタカーのワゴン車に乗っていた20代の男性3人と女性2人の身元は分かっていない。