34年間の点検は作業員の目視だけ
では、何の前触れもなく落下したのか。土木工学が専門の大阪大学・谷本親伯教授は「車が走る振動と換気を行うことにより天井板に振動が発生し、つり金具が緩む原因になります。さらに、地下水が漏れていて、温度変化で結露があったりすると金具の腐食を促進させる」という。
こうした悪条件が重なるにもかかわらず、中日本高速道路の点検は、34年間ずっと目視によるものだけだった。9月に作業員がコンクリート板にのぼって目視による点検を行ったが、異常は確認されなかったという。
これについて山村武彦(防災システム研究所長)は次のように厳しい指摘をした。「30年以上も経っており劣化は間違いないが、それと併せて現場は地震の際に地質的に揺れが溜まりやすいところなんです。昨年の東日本大震災でトンネル内にひずみができ、ボルトなどの金具に負担がかかるようになっていたのではないでしょうか。巨大な地震が発生したあとはそういうことが起こり得るので、点検はしっかりやる必要があります。
東日本大震災の最大の特徴は、つり天井があちこちで落ちたことです。従来の建築基準では分からなかった揺れ方をしており、東北の小中学校1600校では全部天井が落下した。
30年以上もボルトなどを放置したまま取り換えなかったということが基本的に問題で、10~20年たったら劣化を前提に取り換える必要がある」
ということはやはり人災だ。笹子トンネルと同じタイプのコンクリート板を使った換気システムは全国で20数か所あるという。なかでも、中日本高速道路が管理するトンネルでもっと古い中央・恵那山トンネル下り線(1975年開通)、東名・都夫良野トンネル下り線(1961年開通)あり、劣化状態が心配される。