調達コスト削減に本気で取り組まない電力会社
世界の石油・天然ガス市場に詳しい石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之上席エコノミストが生出演し、国谷裕子キャスターの質問に答えた。
国谷「突出して高い値段でLNG を購入しているわけですが、世界最大の輸入国でありながら、なぜ交渉力がないのかでしょうか」
野神「日本の大口需要がほぼ100%LNGによって賄われている構造があるからです。欧州ではイギリス、ノルウエー、オランダは域内の天然ガスやロシア、北アフリカからパイプラインで天然ガスを調達し、供給先が多様化しています。
これに対し、日本の調達市場は寡占化で売り手が限られており、最終的には(相手の言い分を)飲まざるを得ない。足元を見られているんです」
3度にわたる石油ショック時に、官民挙げて原油調達先を中東だけに頼らず、多様化を図るべきだとの意見が出たが、ノド元過ぎればで教訓は全く生かされなかった。
国谷「交渉力をつけるために戦略的に取り組んでこなかったのはなぜなのでしょうか」
野神「日本は安定確保が第一ということで、高い価格であっても消費者に転嫁することでよしとする体制だったことは否定できません。こうした体制に加えて、電力会社の地域独占ということも価格交渉におけるインセンティブ(鼓舞する気持ち)を働きづらくさせていたことが背景にあります」
地域独占にあぐらをかき、何でもかでも突っ込んだ挙句に、利益を積み上げる総括原価方式で決める電力料金がそれを支えてきた。ツケをすべて押しつけられる消費者はたまったものではない。
原発を最大の争点とする衆院総選挙が間もなく公示される。勇ましい中央集権・官僚主導打破も結構だが、まずは具体的な納得できるエネルギー戦略を示して欲しい。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年11月29日放送「『ジャパンプレミアム』を解消せよ~密着 LNG獲得交渉~」