熊本に独立国作っちゃった痛快男!歳費は総理大臣の収入とカンパ。ただいま国民3万2000人
お次は「週刊現代」。一部では有名な人らしいが、政府に期待できないからと「独立国家」を熊本に作ってしまった坂口恭平(34)という痛快な男の話である。建国のきっかけは原発事故。危険があるのに正確な情報を教えないなど、国民を守らない政府を見て、これは政府ではないと思い、生存権に特化した国と政府を作ってしまったのだ。
彼が目指したのは土地と住宅からの解放。早稲田大学時代、建築学科に籍を置き、路上生活者たちの調査をした。彼らの中にはホームレスではなく、合法的に家を持っている人間がいた。調べてみると、係争の結果、誰も所有していない土地というのが都内にあり、銀座にもあるということがわかった。それに、彼らには段ボールハウスは寝室に過ぎないのだ。図書館が本棚、公園は水場、スーパーは冷蔵庫。都市空間のすべてを自分の家と捉える発想があったことに気づいたという。
そこから生み出したのがモバイルハウス。ベニヤ板だけで作った3畳間だけの小さな家だ。モバイルハウスはリヤカーの車輪がついているのがミソで、これだけのことで車両扱いになる。建築基準法上の「家」ではないから、固定資産税はかからないし、建てるのに免許もいらない。
「実は僕も建築士の免許をもっているわけじゃない。これは『住む人自身が建ててみようよ』という提案なんです。モバイルハウスを売るのが目的じゃないので、図面もダダで配っています」
これなら材料費2~3万円だけで家がもてる。自分の生活はゼロから作れるんじゃないかと思い始めた。 昨年3月、坂口は東京を離れて故郷の熊本に戻った。福島第一原発事故で飛散した放射性物質を避けてのことだ。国民を守ろうとしない日本政府に愛想を尽かし、5月に新政府を樹立した。
「原発事故への対応を見て腸が煮えたぎったけど、不満は以前からあった。月給18万円の人がワンルームに住んで8万円も家賃を払うなんて異常。金のないやつは住む場所がなくてもいい、って話でしょう。
もはや政府ではないと思った。だから、日本は無政府状態なんです。でも政府がないのはまずいから、自分が国を建てて、その国の内閣総理大臣になるしかないと」(坂口)
新政府は生存権を守るべく、放射性物質からの避難を呼びかけ、0円で泊まれる避難場所を用意する。その中心がモバイルハウスだ。使われていない土地を無償で借りてモバイルハウスを並べる。初期投資に2~3万円はかかるが、家賃はゼロ。井戸水を使い、自家発電を行えば水道光熱費もゼロだ。
そこへ構想に興味を持った熊本県知事直属の政策参与(現副知事)・小野泰輔が坂口を訪れる。新政府初の「外交」である。坂口はこう話す。「モンテビデオ条約という国家の義務と権利について定めた条約があって、国家の条件は、国民、政府、領土、外交のできる能力の4つ、とある。僕はこれを本気で満たしてみようと思った」
坂口はツイッターのフォロワーを新政府の国民と定義していて、現時点で3万2000人超、この半年で倍増したそうだ。政府は作った。次に行ったのは組閣。まず親交のある文化人類学者の中沢新一に電話し文部大臣に任命。その後も映画監督の鎌仲ひとみを厚生労働大臣にした。近々、東京ミッドタウンにあるフリースペースの使用権を譲り受けて国会議事堂にするという。
坂口は「ルールを破るのではなく視点をズラす」のだという。妻と4歳の子供を持つ。収入は原稿料とドローイング(絵)の販売、それにカンパ。おもしろい発想をする人が出てきたものだ。