精神科医と家族、介護施設スタッフらが協力して「入院減らし」
厚生労働省も「入院減らし」に動き出した。模索も始まっている。石川・かほく市の県立高松病院(120人)では、4年前から精神科の医師ら専門家が積極的に病院の内外で動いている。ひとつは、家族の不安の解消だ。入院で暴力の症状が治まった男性の家族と介護施設の担当者らが集まって、病院での様子などから対策を練る。 「やってみて、ダメならまた入院すればいい」と医師がバックアップする。
別の男性患者では看護師や作業療法士が自宅を訪問して、状況をチェックした。男性には「幻視」があった。症状の元になりそうなガラス戸やテレビの反射までを考える。副院長の北村立医師は、介護施設を訪問する。夜中に大声を出すようになった90歳の女性は、診察で足が痛いらしいとわかった。痛み止めを処方して治まった。BPSDを未然に防ぐ、これも入院を減らす手だてだ。
初期の認知症の82歳の女性は、自宅での家族の聞き取りで、時間がわからなくなって、楽しみだった「健康クラブ」に参加できなくなったストレスがわかった。家族がバスに乗せるなど手助けすることで解消した。
北村医師は「落ちてきた機能や能力をみんなで支えないと、(精神科病院が)最後の砦になってしまう」という。高松病院では重症になってから来る人が減り、この2年は2か月くらいで退院しているという。「ノウハウをもっている精神科のスタッフが外へ出るべきです」
玉井氏はこの成果を、(1)チーム医療(2)生活の場を見て対処(3)バックアップの保証にあるという。「病院の内と外でのバックアップ態勢がすばらしい。必要なのは啓発です」
十数年前の父と母を思い出した。BPSDではなかったが、施設で類似の症状や経緯は確かにあった。あらためて「知らなかったな。かわいそうなことをしたのかな」と考え込まされた。
ヤンヤン