会話のキャッチボールで「そういえばそうだった効果」記憶の強化と脳活性化
国立長寿医療研究センターが心理調査をした。人は70~80歳になると、ウツ傾向の数値が上がるが、4人は極めて低いかほとんどなし。また、日本認知症学会の遠藤英俊理事が脳の血流を調べたところ、驚くような結果が出た。平均年齢に近い千多代さんを調べた。まず初対面の人と「季節の話」をしてもらったが、血流に変化なし。次に百合子さんと話すと、なんと血流が2・5倍になった。4人でしゃべるとさらに増えた。「びっくりしました。姉妹のメリットがはっきり出た」と遠藤氏は話す。
人工知能の研究をしている千葉大大学院の大武美保子准教授は、4人の会話を分析して驚いた。4人で東京駅へ行ったときの話だ。それぞれの記憶は少しずつ違うが、話すうちに「そうそう」と互いの記憶を強化していた。「そういえばそうだった効果」というのだそうだ。
11年前にぎんさんが亡くなった時。「みかん食べてたら(ぎんさんが)『うんよこせ』」「飲ませたらにこっと笑って」「末期の水だった。ごくんといった」「あんた喜んでた」「あはは」
4人は意識していないが、研究者には貴重なデータを提供する。長寿医療研究センターの下方浩史予防開発部長は、「1人がしゃべるとすぐ答えが返って、キャッチボールになる。頭を活発に使う訓練を毎日やってる」という。丸いちゃぶ台もいいらしい。「テーブルだとこうはいかない」
10年前に年子さんが具合が悪くなって、長男は養老院へ入れるというのを姉妹が止めた。「千多代さんと一緒に住むようになって生き返った」という。包丁が怖くて持てなかったのが、いま料理ができるようになった。具合が悪くなったら? 「みんな見舞いにくる」「1日しゃべらんのが一番難儀だ」「あはは」。下方部長は「いま高齢者は閉じこもりが多い。努力してコミュニケーションをとらないといけない」という。4人は生きたお手本だ。
いまどこでもケータイをにらんで無言の人ばかり。若いカップルでも互いにケータイだったりする。これが一斉に年をとったときどうなるんだろう。いささか心配になる。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2012年11月15日放送「『おしゃべり』で老化を防げ!~ぎんさんの娘たち 元気の秘密~」)