苦しかった下積み時代の一句「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」
キャスターのテリー伊藤「素晴らしい人生だった。うらやましい。会うたびにおいしい煎餅をもらった。あんまりおいしいので、お歳暮に配ろうと思って、わざわざ発売元の住所を書いてもらったことがある。細やかな心遣いのできる人だった」。
そうした優しい気遣いの半面、負けん気の厳しさもあった。「放浪記」の始めごろ肺炎になりかけて入院したが、病院から舞台へ通った。「(ベッドで寝ていると)代役という言葉が聞こえるんですよ。(休んだら)この役を取られちゃうーと思って1回も休みませんでした」
90歳になっても復帰へ向けスクワットで足腰を鍛錬していた。内科医のおおたわ史絵は「病気というより、大往生と信じたいですね」
テリーが下積み時代の気持ちを表した森さんの一句、「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」を紹介し、「苦しい時期もあった森さんの人生経験を知ると、『放浪記』がヒットしたのは、その人生背景があったから人を感動させることができたんだなとわかりますね」
日本の女性、日本のお母さんは強い。そのことを身をもって示した女優だった。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト