中国・万里の長城で日本人観光客ら5人が遭難し、3人が死亡したツアーを企画した会社は、3年前に北海道大雪山系のトムラウシ山で8人が死亡した登山ツアーを企画したとの同じ「アミューズトラベル」(東京都千代田区)だった。教訓は生かされなかった。
下見せず、携帯不通話エリア、本社連絡もなし
今回のツアーは全9日間の日程で民宿などに泊まりながら、7日かけて万里の長城を100キロ歩くという予定だった。観光写真では、万里の長城は城壁や通路がきれいに整備されて多くの観光客でにぎわっているが、このツアーは「知る人ぞ知る穴場的な万里の長城へご案内」という触れ込みで、整備されていない、普通の観光客が行かない、500年前そのままの状態の長城を歩くという企画で、一部の登山愛好家には人気のコースだったという。
単なる物見遊山とは違い、それなりの準備と経験が必要だ。しかも、冬に差し掛かり寒さが厳しくなる時期で、現場周辺は52年ぶりの大雪で道路は寸断され、容易に近づけないほどだった。
すぐ思い浮かぶのは、2009年7月のトムラウシ山の事故だ。同じアミューズトラベルが企画し、ツアー客・ガイド19人が遭難、うち8人が凍死した。20メートル以上の強風が吹き、体感温度は0度ぐらいに降下したとみられている。無事下山した男性は「中止すればいいのに。駄目だよ、強行しちゃ。みんなバタバタ倒れていった」と訴えていた。悪天候時の判断基準を設けていなかったなどの安全管理の不備が指摘され、51日間の一部業務停止命令を受けていた。
今回の事故についてのアミューズトラベルの記者会見の内容をリポーターの西村綾子が整理して伝える。
(1)初めてのツアーにもかかわらず、社員・添乗員は下見していない。現地ガイドが下見に行ったかどうかは不明。
(2)ツアーのスケジュール進行に関して現地から問題なければ連絡しない。会社側は連絡なければ順調と判断。
(3)連絡手段は携帯電話。しかし、歩いているところは携帯電話が通じない場所だった。
(4)服装の指示はフリースとセーター。