パソコンが誰かに乗っ取られて、犯罪予告などの犯人に仕立て上げられてしまう。そんな恐ろしい遠隔操作ウィルス問題が「クローズアップ現代」で取り上げられた。こんなウィルスから、ユーザーが自衛するにはいったいどうしたらいいのか――。
誤認逮捕された元容疑者「2ちゃんねる」でおすすめをダウンロードして感染
専門家ゲストの森井昌克・神戸大学大学院教授は「最新のウィルス対策ソフトがあることが前提」とし、「興味本位でソフトウェアをインストールしない」ことを挙げる。国谷裕子キャスターがすかさず「2ちゃんねるにあるようなソフトをダウンロードするところに、危険がひそんでるかもしれない」と合いの手を入れた。「そうなんですね。危険性を考えずに入れてしまうことは問題です」と教授もうなづく。
ウィルスをいかにパソコンに取り込ませ実行させるかは、ウィルス配布者の知恵の絞りどころだが、今回のウィルスは悪名高き匿名掲示板の2ちゃんねるを利用したということである。誤認逮捕された元容疑者の一人は、2ちゃんねるの「気軽に『こんなソフトありませんか?』」という質問スレッドで、ファイルの名前を書き換える「リネームソフト」を求める書き込みをした。それに対して他のユーザーから「こんなソフトがあるよ」と口コミがあり、勧められたソフトをダウンロードしたらウィルスに感染してしまった。
どうやらソフトの紹介者は真犯人で、書き込みのリンクにあったファイルはリネームソフトではなく、遠隔操作ウィルスだったらしい。
悪意や犯罪ばかりじゃないソフトと見分けられるか?
さて、これはいかにも2ちゃんねるらしい出来事だろうか。匿名掲示板といえば、とかく悪意や犯罪と結びつく印象だが、2ちゃんねるの目立たぬ所には、ボランティア的な善意で成り立つ空間も散見される。問題のスレッドも、その趣旨は善良そうである。
広い世の中には、面倒な作業をやってくれたり、優れた機能を持った無料のソフトなどが人知れず存在している。「こんな機能を持ったソフトはない?」と気軽に聞けば、どこかの誰かが自分の知らない優れたソフトを紹介してくれる。ときには、どこかの誰かが自分の欲しい機能を持ったアプリケーションをあらたに作成してくれる、なんてこともあるのかもしれない。
そうした、ある意味2ちゃん的ではない夢のような空間が、テレビキャスターがいかにも2ちゃん的だと眉をひそめる犯罪の小道具として悪用されてしまった。なんとも皮肉で、残念な話ではある。やっぱり、悪意に満ちた唾棄すべき匿名掲示板の書き込みを安易に信用してはいけなかったのだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2012年10月23日放送「仕組まれた罠(わな)~PC遠隔操作の闇~」)