今月2日(2012年10月)に87歳で亡くなった俳優の大滝秀治さんのお別れの会がきのう22日、東京の青山葬儀所であった。俳優や脚本家をはじめ芸能関係者や一般の人たち980人が別れを惜しんだ。キャスターのテリー伊藤は、大滝が若いころ意外な映画に出演していたことを明かし、無名時代から存在感のあった大滝の俳優人生を偲んだ。
挨拶状には「もう駄目だと思ったり まだやれると思ったり」
お別れの会の参列者に配られた挨拶状の裏側には、大滝の笑顔の写真と亡くなる10日前に書いた自筆の言葉が添えられていた。「もう駄目だと思ったり まだやれると思ったり」。この言葉、大滝のモットーで、よく通っていた店にも額に入れ置いてある。その思いで生涯俳優を貫いたのだろう。
大滝は1950年、25歳の時に劇団民芸創立に研究生として参加した。同期には共同代表を務めた奈良岡朋子がいる。宇野重吉に「お前の声は壊れたハーモニカのようだ」といわれたのは有名な話だが、長い不遇の時代を経て次第に看板俳優の1人となり、映画やテレビ、CMの世界へと活躍の場が広がった。
初顔合わせの時には、すでにボロボロになるまで脚本を読み込んでいたという役作りにかける執念は、多くの共演者を驚かせた。昨年(2011年)には文化功労者に選ばれ、このとき受賞の喜びを「早起きは三文の徳といいますが、長生きは三十文、三百の徳だね」と語っていた。
セリフなくクレジットにも名前ない新聞記者役タバコの吸う演技すごい!
司会の加藤浩次「役者さんに愛された役者さんでしたね。主役の役者さんが絶対必要と思うような」
キャスターのテリー伊藤「ほかにいない。日本の宝だった」
「実はですねえ」とテリーが紹介したのが、映画『天国と地獄』だった。誘拐を素材にした1963年の黒澤明監督の作品だ。「37歳の大滝さんが出演しているんですよ。クレジットにも出ないくらい無名ですよ。実は私も後から気がついたのですが」と話し始めた。
役柄は新聞記者。そのシーンが画面に現れた。警部役の仲代達矢が捜査状況を説明するのを聞く報道陣の1人だ。画面やや右側で、たばこを吸いながら仲代の話を聞き、胸のポケットからメモ帳を取り出す。せりふはない。テリー「このたばこの吸い方、食い入るような表情、すごい存在感を出している。黒澤さんもすごいし、この役で自分の存在を見せてやろうという大滝さんはすごいなあとあらためて感じました」
それにしても、テリー、このわずかなシーン、よく気付いたものだ。