「悔やみきれない」自分攻め続ける両親・兄弟―熊本・女児連れ去り殺害で証言

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「あの時、なぜ飛び込まなかったか」

   父親は今も自責の念に駆られる。熊本市内のスーパーのトイレで3歳の清水心ちゃんを殺害したとして殺人などに問われている元大学生の山口芳寛被告(21)に対する裁判員裁判の第4回公判が、きのう22日(2012年10月)、熊本地裁で開かれ、両親が事件直後の状況について語った。

「あの時、トイレのドアを蹴飛ばして入っていれば救えたのではないか」

   事件の起きた昨年(2011年)3月3日、家族と買い物に来ていた心ちゃんは、トイレに行きたいと1人でトイレに向かい行方がわからなくなった。父親の誠一郎さん(41)と母親の真夕さん(39)は手分けして店内を探し回った。誠一郎さんは多目的トイレの前で「心ちゃん、心ちゃん」と何度も叫んだ。その時、中から「使用しています」という声が返ってきた。それが犯行時の山口の声だったのだ。「あの時、ドアを蹴飛ばして入っていれば命だけは救えたのではないかと思いました」と語る。

   真夕さんはその直後の山口とすれ違っていた。トイレからリュックを背負った若い男が出てきたのだ。「もしかしてと思ったのですが、(リュックが)人が入るほどの大きさではなかったので、目線を移してトイレの中を確認しました」

   男はうつむいて足早に去った。すぐ後を追ったが見失った。そのリュックの中に心ちゃんがいたと知り、「腰が抜けるほどびっくりした。なぜ捕まえなかったのか。自分を責めました」。両親にとっては、悔やみきれない痛恨事だったに違いない。

   誠一郎さんは証言台で「娘は3年半という短い人生。たった42か月のために妻のお腹の中で必死に生きてきた。娘を虫けらのように殺し、その遺体にわいせつな行為をした被告は許さない。死刑でも足りない」と訴えた。

文   一ツ石| 似顔絵 池田マコト
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