3歳の女の子をスーパーのトイレで殺害したとして、殺人などに問われている元大学生の山口芳寛被告(21)に対する初公判がきのう16日(2012年10月)、熊本地裁で開かれた。罪状認否で山口は「殺意を持ってやっておりません」と殺人罪について否認した。
いまも娘の食事作り衣服やおもちゃ買う両親
両親は被害者参加制度を活用して裁判に出席した。父親の誠一郎さん(41)は心ちゃんが両手でVサインをする笑顔の遺影を、母親の真夕さん(39)は心ちゃんが大事にしていたぬいぐるみを抱いて入廷した。初公判目前の今月2日の記者会見では、誠一郎さんは「家族の太陽がいなくなり、光がなくなりました」と悲しみと怒りを語っていた。今でも毎日の食事の時は娘の心ちゃんの食事を作り、元気でいたら身につけたであろう衣服やおもちゃを買っているという。冒頭陳述で語られる犯行の詳細がショックだったのか、誠一郎さんは休憩のときに気分が悪くなり救急車で搬送された。
本村健太郎(弁護士)「解剖鑑定書、死因や遺体の損傷状態で殺意判断」
事件があったのは昨年(2011年)3月3日のひな祭りの日だった。山口は家族みんなで買い物に来ていた心ちゃんをトイレで殺害、リュックに詰めて近くの水路に遺棄したとして殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄罪に問われている。
冒頭陳述で検察側は、山口は心ちゃんを多目的トイレに連れ込み、便座に座らせると大声をあげて泣いたので片方の手で口をふさぎ、もう一方の手で首を絞めて殺害したと述べた。また、山口が心ちゃんを運んだとされるリュックは普段使用しないもので、犯行に備えて用意したものだと指摘した。
これに対し、弁護側はトイレがノックされたのでパニック状態になり、顔をドアの方に向けたまま口を押さえていた手が首にずれて死亡にいたったと反論、殺意を否定した。
コメンテーターの本村健太郎(弁護士)は、殺意の有無について「今後出てくる解剖の鑑定書などによって、死因や遺体の損傷の状態から判断される」という。内科医のおおたわ史絵は「これからも両親にとってつらい事実が出てくると思いますが、気持ちをしっかり持って闘ってほしい」と話す。
判決は10月29日だ。