爆破や無差別殺人の予告メールの「真犯人」を名乗るメールが、TBSと弁護士宛に届き、犯人しか知りえない内容と手口から、パソコンの遠隔操作による 「なりすまし」であることが明らかになった。目的は警察・検察の捜査レベルをさぐることで、「あそんでくれてありがとう」と捜査当局をあざ笑うような文言もあった。
「自作ウイルス『トロイ』で感染させた」と手口公開
落合洋司弁護士に送られて来たメールには、「【遠隔操作事件】私が真犯人です」という頭書きで、「このメールを警察に照会してもらえば、私が本物の犯人である証明になるはず」として、12件の犯行予告が示されていた。落合氏は「内容が具体的で、単なる情報の組み合わせではない」と信憑性を認めた。
メールは今回の目的について、「世間を騒がす、無実の人を陥れて影でほくそ笑むことではなく、『警察・検察を嵌めてやりたかった。醜態を晒させたかった』という動機が100%です」とあった。
手口も具体的に示されていた。6月(2012年)に横浜市のサイトに書き込まれた「小学校への殺人予告」では、名前の「鬼殺銃蔵(おにごろしじゅうぞう)」など内容が一致していて、7月の大阪の「大量殺人予告」では「自作の『遠隔操作トロイ』を感染させた」というパソコンの画面まで表示可能にして、この事件で逮捕された男性の名前を示した。
また、「事件になっていない」という件では、名古屋市の会社のパソコンを経由した遠隔操作 の証拠も示した。三重の件では「警察が気がつくように」わざわざウイルスメールを残したとも書いていて、いずれもその通りだった。メールが示した予告は12件だが、「首相官邸」「日本航空」「任天堂」など7件はまったく表に出ていなかった。なかには、受信者が「迷惑メール」に分類して気づかずにいた「学習院」のケースもある。
処分受けた大学生までいる誤認逮捕・起訴
メールには「警察・検察の方へ」として、「あそんでくれてありがとう。今回はこれくらい にしておくけれど、またいつかあそびましょうねーー」とあった。ヨーロッパの複数の国を経由して送られていて、専門家は「これだと発信元の特定は事実上不可能」という。
一連の事件では、これまでに大阪、三重、福岡でパソコンの持ち主が逮捕され、その後、遠隔操作が判明して釈放されているが、横浜の大学生は保護観察処分が確定している。
取材した田中大貴レポーターは「怖いのひとことでした。パソコンでインターネットを利用した人ならだれでも犯人に仕立て上げられてしまう可能性がある」という。 防ぐ手だては、知らないメールは開かない、妙なアプリはダウンロードしないと、こればかりはいつまでも同じというわけだ。
司会の小倉智昭「といわれても、うっかりということもある。今回は逮捕者も出たし、保護観察までいっちゃった学生もいる。ネットバンキングにまでいっちゃったらかなわない」
田中「犯人は明らかに自分は捕まらないと自信をもっているようです」
小倉「ウイルス対策ソフトはあるけど、遠隔操作対策はないの」
田中「ソフトとウイルスのいたちごっこなんです」
笠井信輔キャスター「サポートセンターにつなぐと、実際は遠隔操作されている。それより誤認逮捕された人が釈放されてよかったなじゃなくて、やってもいないのに自白した人がいる。警察の取り調べがどうだったのか、しっ かりと調べないといけない」
そう、そっちの方がずっと怖いことかもしれない。