今年のノーベル文学賞は現代中国を代表する作家・莫言に決まった。授賞理由についてスウェーデン・アカデミーは「幻覚性のリアリズムで、民話と歴史、現代を融合させた」と説明している。
中国政府と緊張関係の莫言氏たびたび来日
莫言は人民解放軍入隊後に文学を学んだという異色作家で、山東省出身の57歳。主な作品には、故郷を舞台に抗日戦争を描いた「赤い高梁(コーリャン)」がある。中国人作家のノーベル文学賞はフランスに亡命した高行健がいるが、中国としては初の受賞となる。
まさかスウェーデン・アカデミーが尖閣問題で中国の肩を持ったわけではないだろうが、作品を読んでいないという与良正男(毎日新聞論説委員)がこんな解説をした。
「亡命はしないけれども、ギリギリのところで政府に対し注文をつけるという立場の作家らしいですね。一人っ子政策の問題点もテーマにしているようです。民族を描いているので、昔の抗日運動も描いているようですが、何度も日本に来ているそうで、そういう人の発言力が強くなる中国はいい」
「知られざる作家に光を当てる」最近の文学賞
しかし、日本としては村上春樹氏の受賞を期待していた。スウェーデン・アカデミーのペーテル・エングルンド事務局長は「村上さんは素晴らしい作家だが、選考過程についてはコメントできない」という。
東京・荻窪の喫茶店に集まった『ハルキスト』たちは、読書会を開いて受賞の知らせを心待ちにしていたが、受賞ならずに「来年があるさ」と残念そう。村上春樹の作品に詳しい横浜市立大の鈴村和成名誉教授は「ノーベル文学賞は知られざる作家に光を当てる傾向が強い。春樹氏の知名度の高さが裏目に出たのだろう」と見ている。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト