2030年代に原発ゼロになると電気代が2倍になる――。こんな予想にため息をついた人もいるだろう。政府が4つの研究機関に依頼して試算した結果をもとに、一部の新聞が「電気代倍増も」「電気料金や光熱費 2倍に」などと報じたものである。
電気料金「2倍」の試算は、現在電気代を月1万円支払ってる家庭が、2030年に原発依存ゼロ、15%、20~25%の3つのシナリオの場合で、それぞれおいくら払うことになるのかを計算したものだ。「モーニングバード!」(と玉川徹・テレビ朝日社員リポーター)が同じ試算を見てみると、先の新聞の見出しとはかなり違った見方になったらしい。
電気代上がれば節電も進む
試算を出した機関のひとつ、国立環境研究所では、原発ゼロの場合、電気の単価はたしかに上がると見込む。現在の使用量をそのまま当てはめると、原発ゼロの電気代は20000円を超える。しかし、単価が上がれば「省エネ家電の導入などで消費量も下がる」ことが予想される。単価が高いほどこうした傾向は強まるため、電気代は結局すべてのケースで14000円と横並びになるとの試算を出した。原発ゼロで電気料金が1.4倍だが、原発25%でも1.4倍というわけである。
ほかの試算では、原発ゼロが原発25%より高くなっているが、その差は数千円内にとどまっている。原発ゼロでもっとも電気代が高くなる試算は、慶応大学・野村准教授の21000円。たしかに「電気代倍増」に違いないのだが、この試算における原発20~25%の電気代は17000円~18000円である。
2030年、原発がゼロだと電気代が現在の2倍になるかもしれないが、その場合は原発25%でも現在の1.7~1.8倍になるのである。どっちにしても電気代は大幅に上がるのだが、そのことはあまり伝えられていないようだ。