笠井信輔キャスターの「速ダネ」コーナーで、読売新聞のスクープを取りあげた。「iPS心筋を移植」「初の臨床応用」という1面トップ記事だ。ハーバード大学の日本人研究者らのチームが実施したという。笠井は「ノーベル賞を受賞した山中伸弥・京大教授は実用化は早くても来年くらい、安全かどうかがわからないといっていたのが、読売を見るともう始まってる。しかも8か月前にアメリカで」という。
他にも6人が現在治療中
読売新聞によると、移植手術を行なったの森口尚史・客員講師らのグル-プで、重症の心臓病患者の肝臓の細胞からiPS細胞を作り、これを心筋細胞につくりあげて患者の心臓の壊死していた部分に注入した。この患者は心臓機能が回復して退院、すでに8か月普通の生活をしているという。この第1号に続いて、6人が同じ治療を受けているという。
笠井「驚きましたね」
司会の小倉智昭「心臓の30か所に注入したら10日でいい症状になってきたというんでしょ、すごい話ですよね。しかし、日本ではそれを人に応用するなんてできないじゃないですか」
この話は研究者のあいだには伝わっていたらしい。慶応大学の八代嘉美特任准教授は「iPS細胞から作られた心筋細胞を移植することは、安全性が不完全なので、日本では認められていない」という。ハーバード大では大学内だけで暫定的に許可を出している。八代准教授は「実施した全員に拒絶反応や腫瘍化がないのはいいこと」ともいう。
弁護士立ち合いで「研究中の治療を私は受けます」と了承
ただ、iPS細胞を作るやり方が山中教授とは違っていた。山中は皮膚細胞に4つの遺伝子を加えて作るが、森口グループは肝臓の細胞に特定の2つの化学物質を加えて作った。
キャスターの菊川怜「いろんな流派が出てきそうですね」
小倉「ハーバード大も、心不全で手のほどこしようがないからこの方法をとったんでしょう。臓器移植のために子どもがアメリカに渡ったりしてるでしょう、今度はこのために行きたいという人が出かねない」
読売の記事にも、そうした患者から「早く実現してほしい」という声が載っている。笠井は「安全性の確認がありますから、今回は『研究中の治療を私は受けます』というのを弁護士立ち会いで了承しているそうです」
菊川「いまは順調でも、副作用が出る可能性もあるから」
小倉「患者の立場で、このままだと助からないとわかっていればやってもらいますよね」
為末大(元プロ陸上選手)「アメリカはリスクを本人が理解すればOKだが、日本の場合はルールがまず決まらないと、というのがある」
自己責任というやつだ。日本社会にはまだ「お上が」というのが根強い。文化といえなくもないが…。