東京・世田谷区の住宅街で10日白昼(2012年10月)に起きた立てこもり事件で、被害者の女性は腹部を刺され病院で死亡が確認され、刺した男性は女性宅で自殺していた。加害者と見られる徳永重正は警視庁の元警視で86歳、被害女性は久保節子さん62歳と、二人とも決して若くない。
よくある些細な近隣トラブルらしいが、なぜここまでエスカレートしたのか。
「人間の尊厳が傷つけられたと」被害届
事件現場は東急・田園都市線の駒沢大学駅から約800メートル入った静かな住宅街だ。リポーターの米田やすみが近隣住民から得た話を総合すると、トラブルが始まったのは今年5月ごろで、被害者が路上に置いていた植木鉢、飼っていたネコ、殺虫剤の散布をめぐって言い争いが絶えなかったという。
取っ組み合いのケンカにまでエスカレートして、被害者が徳永に馬乗りになったこともあったらしい。徳永はこの時、近所の女性に「人間の尊厳を傷つけられた」と話している。徳永はよほど腹にすえかねたのだろう。今年7月に警察を訪れ「久保さんから暴行を受けた被害届を出したい」と相談している。警察が近隣住民から事情を聞いているさなかに事件となった。そして事件当日。近所の女性の話では―
「前日に徳永さんの奥さんが久保さんに『謝ってくれないか』と話してて、久保さんは『なぜ私が謝らなければならないの』と答えていました。事件当日も徳永さんが刃物みたいなものを持ち出してきてもみ合いになったので、私が『おじさんやめて、2人とも落ち着いて。やめて』といったところ、急に静かになったので見たら、久保さんの手が血まみれになっていたんです」
元警察官とはいえ86歳の高齢で、しかも杖をついていたというから取っ組み合いになっても素手で女性を押さえつけることはできず、馬乗りにされた。その屈辱は耐えられなかったのかも。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト