<最強のふたり>2011年の東京国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀男優賞をダブル受賞したフランス映画だ。パラグライダーの事故で首から下がまったく麻痺してしまった大富豪の男と、スラム街出身の黒人青年という全く境遇の違う二人の友情を爽やかに描いた。ハリウッドがリメイク権を獲得したことでも話題になっている。
「スラム街出身・社会的弱者の健常者」「勝ち組・大富豪の障害者」
ドリス(フランソワ・クリュゼ)は失業保険申請に必要な不採用通知目当てに、大富豪フィリップ(オマール・シー)の元へ面接にやってきた。断られるつもりの仕事は、フィリップを泊り込みで介護するというものだった。これまで面接に来た人は、みな「人助け」としてこの仕事がしたいと話したが、ドリスは違っていた。採用されるつもりがないから、横柄ですこぶる態度がでかい。車椅子のフィリップを見てもまるで関心がなく、「失業保険をもらいたいだけ」と自分の都合しか話さない。フィリップはそんなドリスにどこか惹かれるものを感じ、採用する。
障害者と介護者の交流がテーマと聞くと話は深刻になりがちだが、この映画は笑える。ドリスはフィリップの肉体的な障害をそのまま受け入れ、「弱者」などと少しも考えないからだ。麻痺している下半身にお湯をかけて反応がないことを面白がったり、耳でも快感を感じられることを知って性感マッサージの女性をデリバリーするなど、友人として普通に付き合う。介護しているという意識はまったくなく、自分とは違う友人に興味を持ち、少し役に立ってやろうと思っているだけなのだ。その清しさが観客の笑いを誘うと同時に、障害者と介護者の在り方についても考えさせる。