おととい2日(2012年9月)未明、41歳で亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さんの死因は、肺カルチノイドという聞きなれない病気だった。有効な治療法のないなか、闘病生活の陰には妻の献身的な支えがあったという。
肺がんの一種で40代から増加
10万人に1人といわれる肺カルチノイドとはどんな病気なのか。肺がんの専門家、土屋了介医師によると、「カルチ」はがん、「ノイド」はもどきの意味で、広い意味で肺がんの一種。良性の定型的と悪性の非定型的があり、金子さんは非定型的カルチノイドだった。発症に男女差はなく、40代から増加する。気管支の末端部部分に発症するため、初期の自覚症状が出にくい。
特別な予防法はなく、早期発見のための検診が何よりの対策となる。会社などの定期的な健康診断の際、エックス線検査で見つかる場合もあるが、CTスキャンが有効だ。金子さんと同い年のリポーターの大竹真もCTスキャンを受けたが料金は1万8000円。2~3週間で結果がわかる。さらに2000円追加すると、結果をCDにしてもらえ、セカンドオピニオンの際に役立つ。(医療機関によって料金には差がある)
スタジオには、母親が肺カルチノイドにかかったが、発見が早かったため手術で回復したという視聴者からのメールが届いた。電話で本人に聞くと、68歳の女性で、10年ほど前に市の健康診断のエックス線検査で見つかり、10時間かかって右肺3分の1とリンパ節を切除する手術を行った。経過は順調で、「助かった要因は早期発見だったと思います」と話していた。
「人参12本、グレープフルーツ2個、オレンジ2個、レモン1個の特製ジュース」で免疫力アップ
金子さんは治療法がないと告げられ、病状をこれ以上進めないために体質改善や免疫を高めるために食事に気を遣った。それを支えたのが妻稚子さんだった。「本を10冊以上も読み、毎朝早起きして、人参12本、グレープフルーツ2個、オレンジ2個、レモン1個で特製ジュースを2リットル作ってくれた」と語っていた。
その妻には流通ジャーナリストらしく、「年収300万円でも600万円の生活を保証します」といってプロポーズしたそうだ。金子さんは4人姉弟だったが、3人を病気でなくしている。その分まで生きなければと無言のプレッシャーを感じていたが、妻に「自分の人生を生きなさい」といわれて心を救われ、それが人生の指標になったという。
去年(2011年)の6月、病気とわかった後も笑顔を絶やさず、仕事を続けていた。同じ事務所でコメンテーターのおおたわ史絵(内科医)は病気のことや人生について頻繁にメールのやり取りをしていた。
「いつも奥さん、ご両親、周りの人への感謝を忘れない人でした」
おおたわはそう言って、金子さんの早すぎる死を悼んだ。