頼りない学校や教育委委員会に任せていては子どものいじめはなくならないと、自治体がルール作りに動き出している。岐阜県可児市議会は2日(2012年10月)、全国で初めてとなる「子どもいじめ防止条例」を全会一致で可決成立させた。「意識づくりとしては理想的」(教育評論家の尾木直樹氏)といわれる可児市の防止条例とはどんなものなのか。
尾木ママが第三者委員会特別顧問
小・中学生でも読めるように「です・ます調」で書かれており、「8881人の小・中学生を地域全体で守る」というのが条例の趣旨だ。目新しい具体的な施策として次のようなことが明記された。
★保護者はいじめが許されない行為だと子供に理解させる責務がある。
★市民がいじめを発見した時は、市や学校などに速やかに通報、相談する責務がある。
★市民からの通報をもとに調査を行う第三者による専門委員会を常設する。
可児市では2年前の10年6月、当時中学2年の女子生徒が上級生に服を脱がされ、その模様を携帯電話で撮影されるいじめが発覚した。翌月には、中学2年の男子生徒が同級生から「ボクシングごっこ」と称して殴られるいじめも発覚した。
この年の10月の市長選で、いじめ撲滅を公約した冨田成煇氏が当選し、2年がかりでこの条例を制定した。冨田市長は「子どもたちがいじめという卑劣な方法で悲しい思いをする。最悪な場合は命と絶つ。そういう社会を放置していてはいけない。解決するのは社会全体の責務なんだ」という。
「周囲の無関心はけして許さない」。この条例にはそんな強い思いがにじんでいるが、罰則規定がない点で市民にはこんな声もある。「昔と違ってケンカして仲直りとかない。とことんやっちゃうので、罰を与えないといつまでもなくならない。罰則がある条例がいい」
新たに市が設ける第三者委員会の特別顧問に就任した尾木が「朝ズバッ!」に出演して、この条例について次のように話した。「柔らかくて温かみがあっていいなと思いましたね。たしかにペナルティーはないが、意識づくりとしては理想的だと思います。罰則があっても100%なくなるわけではないですから。意識改革からやった方がいい」