中国全土を吹き荒れた反日デモの中で、中国政府はどこまで関与していたのか、その後の収拾はどうなっているのか。「直撃御免」コーナーが日系デパートや企業の襲撃映像や、暴徒に襲撃されて半身不随になった中国市民への取材で分析した。
ネットには「恐ろしい国」「市長と公安局長は辞職せよ」の書き込み
映像の中には、放火された日系企業の消火中の消防士に、若者が「消すな」「消すな」と言っているものがある。これに消防士は「消火は安全のためだ。日本のためじゃない」と言い返す。また、デモ隊に向かって「理性反日 文明愛国」と書いた紙を掲げて抑制を求めていた若者が、止まないペットボトルの雨に、ペットボトルを拾って投げ返した。とたんに警官が現れて若者を拘束した。中国人同士の衝突に発展するのを恐れたのだろうか。
地方の共産党委員会にもデモは押しかけ、建物を占拠する事態にもなったが、翌日にはデモはきびしく規制されてしまった。抑えようと思えばいつでもできるという証明だ。
最も衝撃的だったのは、西安で15日(2012年9月)に起こった事件だ。日本車に乗った男性に若者が鉄製の手カギで襲いかかり、3度4度となぐって重傷を負わせた。倒れた男性の妻が「助けて」と泣き叫ぶが、みな見ているだけだ。51歳の男性は頭蓋骨折で右半身が不随になった。この西安の事件が中国国内のテレビで報じられたのは8日後だった。男性は李建利さんといい、あの日は妻と息子とその婚約者4人で買い物にいく途中だった。妻の王叔叔さんは「車をこわさないでといっただけなのに」と話している。
目撃女性は「ホンダの車はマークを隠して無事だった。次の車が襲われた」という。別の市民も「デモをしっかりコントロールしないといけない」という。ネットには「恐ろしい国です。政府の反省を求める」「市の執政能力のなさの表れだ。市長と公安局長は辞職せよ」などの書き込みもある。
壊されたホテル「「被害にあってない」「デモは来なかった」と必死の否定
「とくダネ!」は被害男性を探し出した。病院の神経外科に入院していた。数日後、妻の王さんと電話取材に応じた。 夫の李さんは「前より話せるようになった」といい、「役人がきのう来て、2万元(24万円)の見舞金をくれました。いまは口止めされている。夫の気持ちが落ち着かないから話さないようにと。落ち着いたらまたお話ししますよ」と言って切れた。
2万元は大金だ。中国・西安の平均年収の3分の1にもなる。他にも奇妙なことはあった。壊されたホテルに電話すると、「被害にあってない」「デモは来なかった」と否定する。目の前で修理が進んでいるのに、破壊活動があったことを隠そうとする。
司会の小倉智昭「口止めははっきりしてますね」
荘口彰久アナ「2万元の見舞金をくれたと言ったときも、あ、しゃべってしまったというような雰囲気がありましたね。いまは連絡がとれなくなりました」
李さんを襲った容疑者はきのう2日、 河南省で逮捕されたという報道があった。蔡容疑者というだけだが。デーブ・スペクター(テレビプロデューサー)が「罪がどうなるかが気になる。救いは一般の人の中にも批判が出ていること」という。
荘口「中国国内ではこうした映像はYouTubeにも載せられないが、何らかの方法で伝わって入るようですね」
小倉「中国の外務省報道官が『責任は全て日本にある』といっていた。信じられないね」
11月8日には共産党大会で新執行部が決まる。それまでは何としてでも政府批判を表に出さないということだろう。中国政府は民衆の怖さをわかっている。