都会の寂しい女たちを騙し続ける夫の狂気―阿部サダヲの目ヂカラに説得力
都会のさみしい女たちを次々と手玉にとる貫也役に、いかにもモテそうなイケメンではなく、阿部サダヲを配したところにも西川美和監督のセンスが光る。もともと愛嬌者の貫也が女を騙し続けるうちに孤独になっていく。その複雑な胸中を阿部サダヲのあの持ち前の目力だけで語らせるシーンは、見ごたえがあった。
お互いに信頼し合っていた夫婦なのだから、どちらにも「もうやめよう」と言い出すタイミングは何度もあったのに、そのひと言が言えず、いつの間にか引き返せないところまできてしまう。純粋な愛も夢も、手段を間違えれば悪になるということか…。「ゆれる」(2006年)や「ディア・ドクター」(2009年)ほどパンチはないものの、今回も誰もが楽しめるエンターティメントを西川監督は提供してくれた。
バード
おススメ度:☆☆☆