グリー、モバゲーに代表されるソーシャルゲームの「闇」が脚光を浴びたのは、5月頃(2012年)のことだ。「コンプガチャ」という仕組みがとくに問題視された。リアルなお金を払って、ゲーム内のアイテムを得る一種のくじ引き「ガチャ」において、ある一定の組み合わせのアイテムをそろえる(コンプリート)と、別のお宝アイテムがもらえるものだ。
このコンプガチャが違法であるとの正式判断がお上から下されたのに前後して、子供、未成年者のハマり込み、親のお金やクレジットカードの使い込み、ガチャそのもののギャンブル性(ガチャ自体は適法とされる)などが取り沙汰された。
それから半年近くも経って、NHKの「クローズアップ現代」に典型的な「ソーシャルゲームの闇」が登場だ。現在も国民生活センターなどでソーシャルゲームへの苦情が多いらしいが、後ればせながらという印象は否めない。
「仲間から称賛されるのがうれしい」130万円注ぎ込んだ会社員
番組では証言者がソーシャルゲームの闇を語りだしていた。130万円を注ぎこみ、やめられないという会社員男性は、めずらしいアイテムを得て、ソーシャル仲間から称賛されるのがうれしいそうだ。しかしゲームをやめないのは、大金を投じてゲーム内で築いた「地位」に対する未練が大きいのかもしれない。「130万も使ったので、『もう飽きたから、やめる』とはいかない。そういう部分でやめられない」
ゲームにはまって高校を退学した18歳の少年は「リアルの世界では努力しても結果が出ないことがあるが、ゲームの世界は必ず結果が出る。誰かの上に立てたり、勝てるのはすごい優越感がある」と言う。
グリー「ガチャ」にアイテム当選確率や課金に警告
ハマるユーザーは本来、ゲーム制作販売側にとっては上得意なのだろうが、社会的な批判の高まりを受けて、こちらも後ればせながらという感じで、過剰なのめり込み防止などの「対策」に乗りだしたそうだ。
ソーシャル最大手のグリーは業界の統一ルール策定に乗り出したほか、自社のゲームで独自にいくつかの改善をはじめたという。たとえばガチャのアイテム当選確率(ギャンブルには欠かせない情報だ)を明示する。課金に移る場面では、統一のわかりやすいフォーマットで警告が出るなどだ。
グリー副社長は「課金が悪いとなるとサービスが成立しないが、社会に受け入れられるためにいろんなことに配慮すべきなのは間違いない。常に緊張感を持ち、注意して対応を続けていく」とコメントしていた。業界のモラル向上に前向きに取り組む――という意欲的な印象よりは、やや受け身な感じのする言い回しではあった。
ボンド柳生