日本郵政グループが10月1日(2012年)から貯金引き下ろしの代行サービスを始める。お年寄りなどから郵便局員が通帳を預かり、手続きをしてお金を届ける。郵便局から遠いところに住むお年寄りにはたしかに便利だが、詐欺グループの絶好のターゲットにもなりか ねない。
巣鴨でお年寄りに聞いても、「顔見知りでないとちょっと怖い」「元気なうちはしない」 「実に危ない。(取材の記者に)あんただって本当にテレビ朝日の記者かい」なんていう調子だ。まあ、当然だろう。「なりすまし」を防ぐ手だてが、よほどしっかりしていないと安心はできない。
郵便局員が通帳預かり、ゆうちょ銀行員が現金手渡し
このサービスは10月から日本郵政グループが5社体制から4社に再編されるのを機に、かつて地方の一部で行なわれていた業務を、全国52の郵便局で復活させようというものだ。小泉郵政民営化で07年からなくなっていた。
リポーターの黒宮千香子が岡山・新見市菅生地区を訪ねた。鳥取県境に近い山あいの農村だ。人口約800人のうち65歳 以上が330人。ここにはかつて「赤いハンカチ」というのがあった。赤い旗に白抜きで大きく郵便マークが入っていて、郵便・貯金・保険で郵便局員に依頼がある場合、この旗を家の前に出しておくと寄ってくれた。
民営化以前の映像があった。配達員がこれを見て訪ねてくる。すると郵便はもちろん、通帳を渡して貯金の引き出しまで頼めた。ところが、民営化後は郵便とゆうちょ銀行が分離したのでできなくなってしまった。住民は業務復活を 「便利になる」「1人暮らしだとね」と口々にいう。
今度のシステムは郵便配達員が通帳をあずかり、ゆうちょ銀行に届ける。すると銀行が手続きをして、銀行がお金を届けるようになる。これで不正や詐欺は防げるというのだが…。
狙われやすい「ひとり暮らしのお年寄り」ほど利用
久保田直子アナ「東京と岡山では反応が違いますね」
黒宮「そうなんですよ。近くに郵便局があるとか、公共交通機関があるとか、家族が一緒なら必要ない。でも、取材した菅生というところは、遠い人は5キロも歩いていかないといけない。1人暮らしも多い。すでにこのサービスのことも知っていました」
司会の羽鳥慎一「これはいいサービスですね」
宇治原史規(タレント)「郵政民営化というのはいったいなんだったのかということ。こういう部分で不便になるとはいわれてましたから」
東ちづる(女優)「なんとアナログなと思うけど、都会にも1人 暮らしのお年寄りは多いですからね。でも、いきなり通帳渡すのはねぇ。ご近所付き合いから取り戻さないと」
それよりいま増えているのは、警察官や銀行員になりすますという手口だ。そこへ郵便配達員が加わることになるのか。防犯の専門家も「なりすまし、あるいは電話で巧みに誘ったりは必ずあると思う」と警告する。
松木安太郎(サッカー解説者)「やり方によってはすごくいいことだが…」
黒宮「郵便外務員は現金の取り扱いは禁止で、預かるのは通帳だけ。お金は銀行の人が届けます」
羽鳥「リスク回避が大事になる」
萩谷順(法政大学教授・ジャーナリスト)「何か起きるリスクは利用者が負担すること。これを国のせいだ、ゆうちょのせいだといったら、話にならない」
山あいに住むお年寄り、1人暮らしで車もない。そんな人を「自己責任だ」と放り出していいのかなあ。郵政は盆にかえらず。