スラム街出身で前科のある黒人青年ドリスは、失業手当をもらう目的で、首から下が麻痺した大富豪フィリップの介護の面接を受ける。不採用確実と思っていたが、フィリップは自分を障害者として同情しないドリスに惹かれ、彼を採用することにした。
育ちは悪いが、心優しき青年をオマール・シーが演じ、クラシック音楽とブランドを愛する大富豪をフランソワ・クリュゼが演じた。監督はエリック・トレダノが担当し、各映画祭で絶賛された、フランスで実際にあった話の映画化だ。
「このチョコレートは健常者しか食べちゃダメ」「アハッハ」
フィリップは食事から入浴、車での移動、マッサージ療法、排泄まで誰かの手をかりなければならない。最初はそんな介護に戸惑いや迷いがあったドリスだったが、そのすべてを次第に完璧にこなしていく。ドリス自身が持っていた心の器の大きさと、優しさがさせたことに違いなかった。
町の悪い仲間とトラブルを抱える血のつながらない弟を心配し、フリップにも家族のように優しく接する。秘書をナンパし、ソウルミュージックが大好きで、無免許で高級車を乗り回し、オペラを見に行って大爆笑。デリカシーに欠け、人の心の中に土足でずかずか入り込んでくる。そのくせどこか憎めず、そんな奔放さにみな惹かれていく。
「このチョコレートは健常者しか食べちゃダメ」なんて、絶対にNGなセリフを平気でフィリップに言う。言われたフィリップも「アハッハ」と笑って流す。まさに最強のふたりだ。この2人を見ていると、安っぽい同情なんていかに偽善か痛感する。そしてドリスもフリップも、そんな関係の中で成長し少しずつ変わっていく。次第に芽生える二人の深い絆には涙し、連発するジョークに笑いが止まらない。安心して最後まで誰もが楽しめる映画に久々に出合った気がする。人生の本当の楽しみ方を忘れている方には、ぜひ見てもらいたい。
PEKO
オススメ度☆☆☆☆