舘ひろしの禁煙薬「自殺念慮」「意識障害」の重大副作用
「週刊朝日」の注目記事は「服用者が自殺していた!有名禁煙薬で意識障害」。私は煙草を吸わないので縁がないが、ファイザーが販売するチャンピックスという禁煙薬は「魔法の薬」と呼ばれるほど売れていて、全世界の年間売り上げが約7億2000万ドル(日本円にして約560億円)にもなるそうだ。06年から米国で販売が始まり、08年から日本でも保険が適用される医師による処方薬として販売がスタートした。俳優の館ひろしがCMに出たことで知名度を上げ、国内での累計服用者は約120万人に上る。
この薬、飲むと脳に直接作用するタイプで、効き目が評価されているようだが、実はかなり危険な副作用があるというのだ。8月2日、東日本に住む30代の男性会社員が自宅で首をくくって死んでいるのが発見された。警察は自殺と見ているが、その男性の両親は前の晩の息子の様子がおかしかったというのである。そして、息子の部屋で見つけたのがチャンピックスと患者に渡される禁煙手帳だった。今のところ因果関係はハッキリしていないようだが、チャンピックスには、死にたいと思う自殺念慮や攻撃的行動などの副作用の疑いがあり、そのことはファイザーから医療機関に渡される添付文書に記載されている。
自殺念慮やうつ、心疾患などを引き起こしたとして患者1200人が米ファイザーを相手に訴訟を起こしていると谷直樹弁護士が語っている。厚労省の独立法人・医薬品医療機器総合機構によれば、08年度から12年度までに「自殺念慮」が18件、「自殺既遂」が2件など、自殺に関わる事例は計28件あるという。これはファイザーに報告された数である。だが、ファイザーが運営するサイト「すぐ禁煙JP」では自殺について一切触れられていない。
朝日はファイザーや国をこう批判している。「思い起こされるのは『薬害肝炎』や『薬害エイズ』の問題だ。これらの問題では、国がやるべきことをやらない『不作為』によって、多数の犠牲者が生まれた。チャンピックスでは『犠牲者』がどれだけいるか見当もつかないが、注意喚起などの状況を見る限り、『不作為』が現在進行形で行われているように思えてしまう」
この問題はタバコを吸わない人間にも無関係ではない。厚労省はチャンピックス服用後に起きた『運転中の意識障害』が、2011年9月までに少なくとも12件あったと公表している。公共機関やトラックの運転手に意識障害が起きたら大惨事は免れない。米国では米連邦航空局や全米トラック協会が、パイロットや運転手に対してチャンピックスの服用を禁止している。日本の航空業界は、業務前の健康チェックで服用が認められた場合は業務につかせないそうだが、他の業界は手つかずだ。
昔、「私はこれで禁煙しました」というCMが話題になったことがあったが、「私はこれで禁煙しましたが、事故を起こしてしまいました」では何もならない。早急に副作用があることを、国もメーカーも周知徹底させるべきである。